【資料2】薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2024(たたき台) (144 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47987.html |
出典情報 | 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第12回 1/8)《厚生労働省》 |
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(6) 抗菌薬適正使用についての研究
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国内の抗菌薬適正使用に関わる研究について、過去の報告と昨年度の本報告書以後に(2023 年後
半~)公表された主なものを以下にまとめた。診療請求情報(レセプトデータ)を用いた日本全国の
外来を対象とした研究のみを対象とし、対象地域が限定されている研究や、抗菌薬使用量だけが解析
されている研究は除外した。
レセプトデータは、厚生労働省が構築した NDB2, 3 、国民健康保険のデータベース 4、複数の健康保
険組合のレセプト情報を組み合わせて構築された製品化されたデータベース(JMDC 社の JMDC デー
タベース 1, 5-7、IQVIA 社のデータベース 8 や MDV 社の MDV analyzer11)などが利用されていた。な
お、記載中の角括弧 ([ ])で囲まれている数字は特に記載のない場合、95%信頼区間を表す。
1. 抗菌薬適正使用に関する過去の報告
これまでに抗微生物薬適正使用の手引きで取り上げられている、急性気道感染症や急性下痢症への
抗菌薬適正使用に関する研究が報告されてきた 1-7。抗菌薬使用量は徐々に減少してきているが、なお、
急性気道感染症や急性下痢症への処方が多く適正使用支援の介入の余地があると示唆されていた。そ
の中で 2018 年、3 歳未満の小児に対し、小児抗菌薬適正使用加算が導入され、さらに 2020 年の改定
で対象年齢が 6 歳未満へ引き上げられた。村木らが、IQVIA 社のデータベースを用いて 15 歳未満の
児を対象に、2018 年の本加算の効果について検証を行ったが、加算を申請している施設ではしてい
ない施設と比べ抗菌薬の処方割合がより低かった 8。こうした結果が出ているが、加算年齢の拡大も
行われており、研究対象期間や年齢の拡大、より詳細な年齢別導入有無での抗菌薬適正使用への効果
などの調査も今後の抗菌薬適正使用を進めるために検討がのぞまれる。小児に関しては小児科診療所
を対象にしたアクションプランの効果を調査した研究が新たに報告されており、次項に記す 9。急性
下痢症に関しては、これまでには、大久保らが小児(18 歳未満)について、JMDC 社のデータベー
スを用い、2012 年 4 月~2015 年 12 月にかけて抗菌薬の使用状況を示した 7。4,493 名の急性下痢症
に罹患した外来患者に関するレセプトが調査され、そのうち 29.6%が何らかの抗菌薬処方を受け、抗
菌薬種別ではホスホマイシンが最も多かった(20.3%)。成人について大野らは JMDC 社のデータベ
ースを用い、2013 年 1 月~2018 年 12 月にかけて 0~65 歳の急性下痢症に対する抗菌薬使用状況を
調査した 10。研究期間の 6 年間において、全対象者の 94.6%が非細菌性の下痢症であったが、抗菌薬
処方率(処方数/受診数)は成人男性で 46.5%、成人女性で 40.8%であった。小児(0~17 歳)への抗
菌薬処方率は、男児 30.5%と女児 30.4%であり、過去の大久保らの調査7と大差なかった。また、椙
山らも急性下痢症に対する経口抗菌薬処方の状況についてについて診療データベースを利用した分析
ツール(MDV analyzer:メディカル・データ・ビジョン(株)、東京)を用いて調査した 11。2013
年 1 月~2019 年 12 月にかけて MDV analyzer に登録されている日本全国の診断群分類別包括支払制
度病院を対象に調査され、経年的に処方患者数が減少していたことが大野らと同様に示された。
一方で、都築らは抗菌薬使用量が 2015 年から 2021 年まで経時的に減少し続けているにも関わら
ず、耐性菌による菌血症の疾病負荷には同期間で明らかな減少が見られなかったことを指摘した。な
ぜこのような現象が見られたかについては複数の仮説が考えられるが、ただ抗菌薬の使用量を減少さ
せるだけでは有効な AMR 対策としては不十分である可能性を示唆している 12。
また、抗菌薬適正使用耐性加算や日本化学療法学会の外来抗感染症薬認定薬剤師の導入、アモキシ
シリン等の供給問題等の抗菌薬適正使用に対する様々な影響が考えられ、今後の調査が必要であると
考えられる。