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【資料2】薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2024(たたき台) (87 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47987.html
出典情報 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第12回 1/8)《厚生労働省》
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抗菌薬含有 DHL 寒天培地を用いて、CTX 耐性大腸菌およびキノロン耐性大腸菌を分離した(表 73)。
セファロスポリン(CEZ、セファレキシンまたは CTX)含有培地で分離された CTX 耐性大腸菌は、366
検体中 5 個体(1.4%、14 株)から分離された。分離された動物はシカ 243 個体中2個体(0.8%、6
株)、アナグマ 6 個体中 1 個体(16.7%、2 株)、キツネ 4 個体中 1 個体(25%、3 株)およびアライ
グマ 2 個体中 1 個体(50%、2 株)であった。キツネ由来 1 株が AmpC βラクタマーゼ産生株(CMY2)であったが、その他は ESBL 産生株(CTX-M-27、CTX-M-55、CTX-M-1)であった。NA 含有培
地ではキノロン耐性大腸菌が、366 検体中 17 検体(4.6%)から 35 株分離され、分離された動物はシ
カ(10 頭、4.1%)、ハクビシン(1 頭、13.6%)、タヌキ(1 頭、12.5%)、キツネ(2 頭、50%)お
よびアライグマ(1 頭、50%)であった。キノロン耐性株は DNA ジャイレースまたはトポイソメラー
ゼ IV のキノロン耐性決定領域(QRDR)に変異が認められ、一部の株(シカ 1 頭、キツネ 2 頭)がプ
ラスミド性キノロン耐性遺伝子(qnrB19)を保有していた。
近年、都市部に生息する野生動物を対象にした抗菌剤含有分離培地を用いた調査が報告された (表
73)。2016~2017 年に神奈川県内で捕獲されたタヌキ 80 頭中 20 頭から CTX 含有培地で CTX 耐性菌
が 20 株分離された(25%)。産生する β-ラクタマーゼの内訳は 18 株が CMY-2(n=7)、CTX-M14(n=5)、CTX-M-2(n=2)、CTX-M-1(n=1)、CTX-M-55(n=1)、DHA-1(n=1)を、1
株が CMY-2 と CTX-M-14 を保有したが、1 株は不明であった。2018 年に奈良公園を中心とした市街
地でシカの排泄便を収集して、NA 含有培地を用いてキノロン耐性大腸菌を分離した。59 個体中 41 個
体(69.5%)から NA 耐性大腸菌が分離され、その内 22 個体から分離した NA 耐性大腸菌がフルオロ
キノロンにも耐性を示した。この地域では遺伝子型が類似した薬剤耐性菌が複数のシカで観察され、
シカ-シカ間の伝播(種内伝播)によって高率に耐性菌が分布することが示唆されている。また、2019
~2020 年に奈良公園を中心とした市街地、2018~2021 年に市街地周辺の里山、2019 年に県内山間部
で収集したシカ糞便からセファレキシン含有培地と NA 含有培地を用いて耐性大腸菌を分離した。CTX
耐性大腸菌は市街地のシカ(24.3%、35/144)と里山のシカ(4.3%、1/23)から分離されたが、山間
部のシカ(0/30)からは分離されなかった。また、キノロン耐性大腸菌について、CPFX 耐性大腸菌は
市街地のシカ(11.1%、16/144)と里山の(4.3%、1/23)から分離されたが、山間部のシカ(0/30)
からは分離されなかった。市街地の複数のシカが保有する薬剤耐性菌と里山のシカが保有する薬剤耐
性菌の遺伝子型は異なり、市街地のシカから里山のシカへの薬剤耐性菌の拡散は認められなかった。
国内で野生動物から分離された薬剤耐性大腸菌の遺伝子解析により、パンデミッククローンの
ST131 が分布することが明らかにされている 1-3。それら野生動物由来株と水系環境および人患者由来
の全ゲノム情報を用いた系統樹解析の結果、①国内の ST131 株は公共データベースから入手した国外
の ST131 株とは遺伝的類似性が低いこと、②国内の野生生物から分離された ST131 は国内人由来株の
アクセサリーゲノムに基づく共通のクラスターに分類できること、③コアゲノム SNP 解析により野生
動物から分離された ST131 の一部がヒトから分離される ST131 と遺伝的に類似することから、国内の
ST131 がヒト社会から野生動物を含む自然環境へ拡散したことが示唆された 4。
引用文献
1.

Asai T, Usui M, Sugiyama M, Andoh M. A survey of antimicrobial-resistant Escherichia coli prevalence in wild
mammals in Japan using antimicrobial-containing media. J Vet Med Sci. 84(12): 1645-1652, 2022.

2.

Shimizu T, Kido N, Miyashita N, Tanaka S, Omiya T, Morikaku K, Kawahara M, Harada K. Antimicrobial resistance in

Escherichia coli isolates from Japanese raccoon dogs (Nyctereutes viverrinus) in Kanagawa Prefecture, Japan:
Emergence of extended-spectrum cephalosporin-resistant human-related clones. J Med Microbiol. 71(12) 001631,
2022.

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