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【資料2】薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2024(たたき台) (116 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47987.html
出典情報 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第12回 1/8)《厚生労働省》
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・JANIS(入院)から得られた血液培養由来 Ec 数を用いて CTX 耐性 Ec/Ec を算出した。
c) 健康者における ESBL-Ec 率(妊婦直腸由来)
・外来にてクリニックおよび大学病院の妊婦検診を受診した妊娠後期(35~37 週)の健常妊婦から
採取された直腸スワブを収集し、CTX 含有マッコンキー培地にて分離された株から ESBL 産生大腸
菌を同定し、ESBL-Ec 陽性妊婦数/総妊婦数を算出した。
d) 健康者における ESBL-Ec 率(飲食店従事者糞便由来)
・飲食店従事者糞便から採取された大腸菌を収集し、ESBL-Ec/Ec を算出した。
(2)食鳥処理場の鶏盲腸便由来検体(食品由来の指標として)
・農林水産省動物医薬品検査所の動物由来薬剤耐性菌モニタリング(JVARM)から得られた大腸菌
について ESBL-Ec/Ec を算出した(食鳥処理場で収集した肉用鶏盲腸便由来株)。
(3)環境由来検体
・下水処理場の流入下水および当該地域の河川水を収集し、大腸菌分離用 TBX 培地にて得られた株
から大腸菌および ESBL 保有を確認し、ESBL-Ec/Ec を算出した(北海道、埼玉、長野、広島の下水流
入水、河川水など)。
4.結果と考察
ヒト・環境・食品分野における菌株収集を実施・解析することで、日本国内それぞれの分野での
ESBL-Ec の分離割合が明らかになった(図 19)。
ヒト分野における大腸菌に占める ESBL 保有割合に関して、2019 年~2021 年の血液培養由来大腸菌
について A 県内の大学病院にて調査したところ、ESBL-Ec が占める割合は 29.7%であった。一方で、
JANIS のデータに基づいた入院患者を対象とした血液培養由来大腸菌の日本全国の統計では、2019 年
~2020 年の CTX 耐性株の割合は 24.0%であった。JANIS では菌株を収集せず、薬剤感受性試験の結果
に基づいた表現型の情報のみ収集するため、CTX 耐性株を ESBL 保有株とみなした。このように、基
礎疾患を有する患者の ESBL 大腸菌保有率は 2~3 割であった。一方、健康人として検体採取した 2022
年~2023 年のある地域での妊婦直腸スワブ由来大腸菌では、大腸菌に占める ESBL-Ec の割合が 12.0%
であり、2019 年~2020 年の飲食店従事者糞便由来大腸菌では 4.0%と、いずれも患者由来株よりも大腸
菌の ESBL 保有率は低かった。ヒト糞便における ESBL-Ec の割合は地域社会よりも病院環境で高く、
この理由として抗菌薬の使用が関連する可能性があるという報告がある 7, 8。また、2015 年までの状況
をまとめた文献調査により 9、大腸菌の ESBL 保有率は世界的には 14%であり、アジア(46%)、アフ
リカ(15%)、中央ヨーロッパ(3%)、北部ヨーロッパ(4%)、南ヨーロッパ(6%)、南北アメリカ(2%)と報
告された。その他、妊婦を対象とした各国の大腸菌に占める ESBL 産生率は、ノルウェー2.9%10、ベナ
ン 22.3%11、ESBL 産生グラム陰性桿菌の保有率はレバノン 19.1%12、マダガスカル 18.5%13 などと報告
されている。また、世界全体での入院患者の 21.1%と健康人 17.6%が腸内に ESBL-Ec を保有し、医療
現場における世界の ESBL-Ec 保菌率は 2001~2005 年の 7%から 2016~2020 年の 25.7%へと 3 倍増加
した 14 というメタ分析の報告がある。
また、食品の指標となる食鳥処理場で採取した鶏の盲腸便(2019 年~2021 年の JVARM による収集
株)由来株の ESBL-Ec の分離割合は、今回の調査では 1.77%(CTX 耐性株の割合は 3.04%)であっ
た。日本では、第 3 世代セファロスポリンは、牛及び豚では第二次選択薬として限定的に使用されてお
り販売量は少なく(2021 年: 1.07 t、0.17%)15、鶏では、セファロスポリン系は承認されていない。
2012 年以前は一部で鶏への適応外使用が実施されていたが、現在は中止されている。また最も第 3 世

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