【資料2】薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2024(たたき台) (115 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47987.html |
出典情報 | 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第12回 1/8)《厚生労働省》 |
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② WHO サーベイランスと協調したワンヘルス薬剤耐性菌動向調査(三輪車プロジェクト)
本項目では、ESBL 産生大腸菌(ESBL-Ec)を用いたサーベイランス Tricycle Surveillance(和名:
三輪車プロジェクト)について、その概要およびこれまでに日本国内で得られた結果を示す。
1.経緯
AMR は 2015 年 6 月の G7 エルマウ・サミットにおい主要課題の一つとして扱われ、ヒト、動物、食
品、環境で一体的な取り組み(ワンヘルス・アプローチ)を展開、推進する方針が示された。2017 年
WHO Food Safety and Zoonoses Department とその諮問機関である AGISAR (the Advisory Group on
Integrated Surveillance on Antimicrobial Resistance) は、加盟国が参加できる ESBL 産生大腸菌
(
ESBL-Ec
)
を
用
い
た
Tricycle
Surveillance
(https://www.who.int/publications/i/item/9789240021402) を提唱した。これは key indicator として
ESBL-Ec に焦点を絞り、三輪車の3つの輪の如く、共通のプロトコルに従い各国でヒト由来、食品由
来、環境由来の3つのセクターの大腸菌に占める ESBL-Ec の比率を算出することを基本としつつ、得
られた菌株の分子的な特性評価、疫学的な分析を実施し、GLASS との連携を活かして地域同士の比較
や抗菌薬消費量とのリンクを検討する。日本国内でもこれまでにヒト・食品・環境における薬剤耐性
菌の調査は様々なジャンル、地域において散発的もしくは単発的に実施されていた。例えば、ヒトで
は市中感染大腸菌のうち 26%が ESBL を保有するという報告 2、乳児における ESBL 産生腸内細菌目細
菌の保菌率は 19.3%で、それらは 1 例を除きすべて大腸菌であったという報告 3、食品分野では、食料
品店から入手した日本産鶏肉から blaNDM-1、blaVIM-1 および mcr-9 を保有する K. pneumoniae が分離さ
れた報告 4 がある。また、日本国内の河川と湖沼由来検体のエンテロバクター属菌等より blaGES-5、
blaFRI、blaIMI のようなマイナーなカルバペネマーゼを同定し、環境がこれらの潜在的な貯蔵庫として機
能する可能性があることを示した報告 5 もある。これらのセクター間の関係性を見るための調査は今後、
必須であると思われる。WHO 三輪車プロジェクトのように統一されたプロトコルに基づいた長期にわ
たる全国サーベイランスはこれまで実施されておらず、日本国内の現状を俯瞰しうるデータは存在し
なかった。日本国内においても継続的なヒト・食品・環境における耐性菌調査が必要であることから、
日本医療研究開発機構 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「WHO サーベイラ
ンスと協調したワンヘルス薬剤耐性菌動向調査に係る研究」(研究開発代表者:菅井基行、令和 2 年 4
月 1 日~令和 5 年 3 月 31 日)の研究班が編成された⁶。
2.目的
本研究班では、三輪車プロジェクトに準じたプロトコルを忠実に実施する体制を構築し、得られた
大腸菌および ESBL-Ec の解析を行い、ヒト、食品、環境における大腸菌の薬剤耐性率を明らかにする
とともに、それぞれのセクターにおける耐性化の傾向、セクター間での耐性遺伝子の移動を明らかに
し、国レベルでの比較が可能となるサーベイランスシステムの確立を目指すことを目的とした。
3.対象と方法
大腸菌、ESBL-Ec の分離について、それぞれ以下のように実施した。
(1)ヒト由来検体
a)有病者における ESBL-Ec 率 血液培養由来(一施設)
・A 県内大学病院から得られた血液培養由来大腸菌数を用いて ESBL-Ec/Ec を算出した。
b) 有病者における ESBL-Ec 率 血液培養由来(日本全体)
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