【資料2】薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2024(たたき台) (86 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47987.html |
出典情報 | 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第12回 1/8)《厚生労働省》 |
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④ 野生動物
2013~2017 年に国内で野生動物 475 個体から分離した大腸菌 963 株(シカ 242 個体 525 株、イノ
シシ 112 個体 224 株、小型哺乳類(ドブネズミ、クマネズミ、アカネズミ、ヒミズなど)113 個体 199
株、アナグマ 4 個体 10 株、野生ウシ(トカラ牛)2 個体 3 株、アマミノクロウサギ 2 個体 2 株)の薬
剤感受性試験を実施した(表 70)。シカとイノシシ由来株で 8 薬剤、小型哺乳類で 10 薬剤に耐性を示
した。シカ由来株では耐性菌が 5.9%に認められ、テトラサイクリン(TC、4.4%)耐性が最も高く、
コリスチン(1.5%)、ABPC、スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST、0.8%)の順であっ
た。イノシシ由来株では 8.0%に耐性が認められ、TC(4.0%)、ABPC(3.6%)、CP(1.8%)の順で
あった。小型哺乳類由来株では 18.1%が耐性株で、ABPC と TC(共に 12.6%)で最も多く、ST
(11.6%)耐性が続いた。特に、小型哺乳類では、家畜関連施設由来株で 10 薬剤に対する耐性が認め
られ、ABPC、ST、TC 及び NA 耐性が 10%以上に認められたが、都市部由来株では、2 薬剤(TC と
ST)に対する耐性のみで、山間部由来株では調べた 12 薬剤に対する耐性は認められなかった。また基
質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌は小型哺乳類(家畜関連施設)由来 1 株で認められ、
CTX-M-1 であった。
陸生の野性動物における耐性菌の分布は、生息環境の薬剤耐性菌汚染の影響をうけるが、家畜や伴
侶動物に比べると低率である。2016 年から 2019 年に野生シカから分離した大腸菌 848 株においても、
調査薬剤に違いはあるが薬剤耐性菌の割合は低率(9 株、1.1%)であることが報告された(表 71)。
このように、シカやイノシシが主に生息する山間部の薬剤耐性菌の汚染は低度と考えられた。また、
2017 年から 2020 年に離島(奄美大島)に生息するアマミノクロウサギ由来大腸菌 135 株は調査薬剤
に感受性を示した。草や樹木を主食とするアマミノクロウサギはヒトや家畜、さらに他の野生動物か
ら耐性菌を受け取る機会が少ないのか、今後の調査が期待される。
2018 年から 2019 年に群馬・岐阜・滋賀・大分の 4 県で捕獲されたカワウから分離した大腸菌 144
株では、5.6%が耐性株で、ABPC(3.5%)、TC(2.8%)、NA(1.4%)、CPFX(0.7%)、CL
(0.7%)、CP(1.4%)、ST(1.4%)耐性が認められた(表 71)。また、2019 年に宮島沼(北海
道)で収集したマガンの糞便由来大腸菌 110 株では、1 株(0.9%)が耐性株(ABPC-CEZ 耐性)で、
プラスミド性 AmpC β-ラクタマーゼ産生遺伝子(blaACC)を保有していた(表 72)。カワウが留鳥で
マガンが渡り鳥であることが耐性菌の分布に影響することを考慮しなければならないが、野生の水鳥
からフルオロキノロン耐性株や伝達性β-ラクタマーゼ産生株が分離されたことから野生水鳥を介した
耐性菌の拡散や水環境の汚染には注意しなければならない。
2018~2021 年に国内で野生動物 366 個体中 274 個体(75%)の糞便から分離した大腸菌 750 株(シ
カ 243 個体中 189 個体 517 株、ヌートリア 43 個体中 12 個体 33 株、ハクビシン 22 個体中 22 個体 61
株、イノシシ 18 個体中 18 個体 54 株、タヌキ 8 個体中8個体 24 株、アナグマ 5 個体中 5 個体 9 株、
イタチ4個体中4個体 11 株、キツネ4個体中4個体 11 株、ヒメネズミ 4 個体中 4 個体 7 株、ニホン
ザル 3 個体中 3 個体 9 株、アライグマ 2 個体1個体 2 株、ノネコ 2 個体中 2 個体6株、クマ 1 個体中
1 個体 3 株、テン 1 個体中1個体 3 株の薬剤感受性試験を実施した。
薬剤耐性は、シカ(5.4%、28/517)、ハクビシン(1.6%、1/61)、イノシシ(7.4%、4/54)、アナグ
マ(11%、1/9)、キツネ(9.1%、1/11)、ニホンザル(11.1%、1/9)、アライグマ(50.0%、1/2)に認
められた。キツネ由来株で5薬剤、シカ由来株で 4 薬剤、ハクビシン、イノシシ、ニホンザル及びアラ
イグマ由来株で1薬剤に耐性を示した(表 73)。全体ではテトラサイクリン(TC、5.4%)耐性が最も
高く、その他6薬剤に対する耐性が認められた。キツネで認められた CPFX 耐性菌は、ABPC、TC、
CP に耐性を示す多剤耐性菌であった。
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