参考資料1 自治体から連絡のあった疾患に関する新旧の診断基準及び臨床調査個人票 (107 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46002.html |
出典情報 | 厚生科学審議会・社会保障審議会(合同開催) 厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会(第73回 11/26)社会保障審議会小児慢性特定疾病対策部会小児慢性特定疾病対策委員会(第4回 11/26)(合同開催)《厚生労働省》 |
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○ 概要
1.概要
大型・中型の動脈に巨細胞を伴う肉芽腫を形成する動脈炎である。大動脈とその主要分枝、特に外頚動
脈を高い頻度で障害する。しばしば浅側頭動脈(以下、側頭動脈)を障害する。このため、以前は「側頭動
脈炎」と呼ばれていたが、現在は「巨細胞性動脈炎」とその名称が変更された。50 歳以上の高齢者に発症
し、若年者に発症する高安動脈炎と対照的である。男女比はほぼ1:2~3である。
しばしばリウマチ性多発筋痛症を伴い、後述するように両者は極めて近似した疾患と考えられている。地
理的な偏り及び遺伝素因が認められ、欧米白人に多く、日本を含めアジア人には少ない。
2.原因
原因は不明だが、ウイルスなど微生物感染などの環境因子の存在が疑われ、遺伝要因として HLA-DRB1
*
04 遺伝子との関連が報告されている。
3.症状
約3分の2の症例で側頭部の頭痛を認める。顎跛行は 30-40%の症例で認める特徴的な自覚症状であ
る。血管炎による血流低下・消失による虚血性視神経症のため、発症初期に視力・視野異常を呈し、約
20%が視力の完全又は部分性の消失を来す。患者の 40%にリウマチ性多発性筋痛症を認め、リウマチ性
多発性筋痛症の約 15%は巨細胞性動脈炎を合併する。全身症状として発熱(多くの場合は微熱、ときに弛
張熱)、倦怠感を約 40%の患者で認める。咳嗽、咽頭痛、嗄声などの呼吸器・耳鼻科領域の症状を認める。
一過性虚血発作、脳梗塞、四肢の末梢神経障害などの神経症状、まれに舌梗塞や聴力・前庭障害など耳
鼻咽喉科領域の症状も認められる。
画像診断上、約 50%に大動脈本幹の病変、あるいは鎖骨下動脈や腋窩動脈の病変を認める。25%程
度に大動脈病変による症状徴候を認め、四肢・頸動脈の拍動を触診すること、血管雑音を聴取することが
診断上重要である。また、下肢では、約 20%に腸骨動脈から浅大腿動脈に病変を認める。大動脈瘤は胸
部・腹部に起こり、診断後3~5年以上経てから発見されることがある。巨細胞性動脈炎における胸部及び
腹部動脈瘤は健常者のそれぞれ 17 倍、2.5 倍多いと報告されている。
4.治療法
血管炎症候群の診療ガイドラインを参考に治療する(注1)。薬物治療には副腎皮質ステロイド(ステロイ
ド)を使用する。失明の恐れがある場合には、ステロイドパルス療法を含むステロイド大量療法を行う。経口
ステロイドは2~4週間の初期治療の後に漸減する。維持量のステロイドを必要とする症例が多く、維持量
のステロイドの漸減は更に慎重に行う。ステロイド抵抗性の症例、ステロイドの漸減に伴い再燃する症例、
副作用への懸念からステロイド減量が必要な症例においては、IL-6 受容体阻害薬であるトシリズマブ
(TCZ)、あるいはメトトレキサート*を中心とした免疫抑制薬の併用を検討する。動脈の狭窄病変を認める
場合は、失明や脳梗塞を予防するために低用量アスピリンによる抗凝固療法を併用する必要がある。