Ｂ．カナダにおける医療用医薬品の供給・報告義務

ービスの管理・提供は、個人税、法人税、売上税、

1. 医療保障制度概要

給与課税、その他の収入など、連邦、州、準州の
税制を通じて集められた一般収入で賄われる。各

（1）連邦政府と州政府、運営組織

1） ,2）

州・準州の医療保険制度は、医療上必要な病院や

カナダは連邦国家であり、10 の州と 3 の準州から

医師のサービスをカバーし、サービス提供時に直

構成される。カナダ保健法（Canada Health Act）は、

接料金を請求しない前払い制をとっている 2）。

連邦法であり、カナダ国民の身体的および精神的な

2022 年の医療費は、約 72％が公的資金（州・準州

幸福を保護、促進、回復し、経済的またはその他の

政府から 65.6％、その他の公的部門から 6.2％）、

障壁なしに医療サービスを合理的に利用することを

残り約 28％を民間からの支出となっている。なお、

促進することを目的として、1984 年に制定された。カ

民間部門には 3 つの要素があり、最も大きいのは

ナダの医療制度では、カナダ保健法に則ってサービ

自己負担分（14.3％）、次いで民間医療保険

ス提供の役割と責任を連邦政府、州政府及び準州政

（11.4％）、非消費分（2.5％）である 3）。

府で分担している。州政府および準州政府は、医療
の管理および提供においてほとんどの責任を有して
（3）薬剤給付（カバー）：入院、外来におけるカバ

いる。連邦政府は、カナダ保健法に基づいて、州と準
州が連邦政府の資金を受け取るために、満たすべき

ー範囲、個人負担 4）

保険医療サービスおよび拡大医療サービスに関する

カナダの病院で投与される（入院、救急外来）処

基準および条件を定め、この基準・条件に基づき、

方箋医薬品は、患者の費用負担はない。一方で、

州・準州に資金提供している。また、先住民や退役軍

一般外来では、州および準州政府ごとにカバー範

人といった特定の人々の医療サービスの提供も連邦

囲が設定される。また、先住民や退役軍人といった

政府が責任を有している。

特定の人々の保険については連邦政府が対応す
る。公的給付は、一般的に年齢、収入、および病状

公的医療保険は、カナダ保健法に則って州・準

に基づいて、最低限の医薬品プラン適用を提供し

州ごとに運営され、永住者含む州・準州民は任意で

ている。多くのカナダ人とその家族は、雇用と連動し

加入することができる。州は国民に健康保険料を課

た医薬品保険に加入しているが、一部のカナダ人

すことができるが、保険料の不払いで医療上必要な

は、有効な医療保険がなく、処方箋医薬品の費用

医療サービスの利用が制限されることがあってはな

を全額負担している場合がある。

らない。また、薬局で交付される医薬品については
公的医療保険の対象外であるが、高齢者や民間医

2.薬事承認と外来償還価格（連邦政府）

療保険に加入できない者等については、各州・準
州が運営する公的な薬剤給付プランや民間保険が

（1） 薬事承認 5），6）

存在する。

カナダ保健省（HC： Health Canada）はヒト用医薬
品、医療機器、生物製剤（血液、組織、臓器など）の

なお、退役軍人、先住民、囚人に対しては、連邦
政府が医療保険を運営し医療サービスを提供して

販売を規制するカナダ連邦の当局である。新薬開

いる。

発時の臨床試験は、事前にカナダ保健省に申請す
る必要がある。臨床試験により有効性・安全性が認

（2)サービスカバー概要：外来と入院、財源、医療サ
ービスにおける個人負担割合

められた後、新薬承認申請を提出後、カナダ保健

2、3

省によって食品医薬品規制（FDR:Food and Drug

公的医療保険は州・準州ごとに運営されており、

Regulations）の要求する安全性、有効性、品質に基

給付範囲は州・準州によって異なっている。医療サ

づき審査され、ベネフィットがリスクを上回ると認めら

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