初は、人口の約 10%が強制的に被保険者となって

Ｄ．ドイツにおける医療用医薬品の供給・報告義務

いたが、現在では人口の約 88%、つまり約 7400 万
１． 医療保障制度概要
ドイツは連邦国家であり、旧西独 10 州、旧東独 5

人の被保険者が法定健康保険（GKV）に加入して
いる。

州及びベルリン州の 16 州から構成される。ドイツの
社会保険は、一方では失業、病気、要介護、労働

さらに約 900 万人の国民が民間の健康保険に加

災害、職業病などの一般的な生活リスクに対する保

入している。残りの国民は、ドイツ軍が提供する無料

護を提供し、他方では老齢に対するカバーを提供

の軍隊医療など、特別な形態の医療によって保険

する法定保険制度である。社会保険は、農民のた

に加入している。法定健康保険（GKV）は通常単数

めの老齢保険を含む法定年金保険、法定健康保

形で呼ばれることが多いが、一様なブロックではな

険、社会的介護保険、法定傷害保険、労働促進と

い。この保険は、それぞれが独自のプロフィールを

いように構成されている 1）。

持つ多数の独立した健康保険基金で構成されてお
り、国民はその中から自由に選択し、切り替えること

2007 年 4 月 1 日に法定健康保険（GKV ：Die

ができるのである 3）。

Gesetzliche Krankenversicherung）、2009 年 1 月 1
法定健康保険（GKV）と異なり、民間医療保険

日に民間医療保険（PKV：Verband dr Privaten
Krankenversicherung）に強制保険が導入され、ドイ

（PKV）の保険料は、保険給付の範囲と個々の被保

ツに居住地または常居所がある場合は、すべての

険者のリスクに応じて決まる。法定健康保険（GKV）

国民に健康保険への加入が義務づけられた。特に

から民間医療保険（PKV）への移行は、自営業者、

被雇用者は、収入が一定の上限を超えない場合、

公務員、強制保険限度額以上の所得を持つ従業

法定健康保険（GKV）に強制的に加入する（2022

員など、強制保険の対象外である特定の人にのみ

年、強制加入の上限は月額 5,362.50 ユーロであ

可能である。しかし、民間医療保険（PKV）から法定

る）。月収がこの上限を超える場合、被保険者は任

健康保険（GKV）への切り替えにも厳しい制限があ

意継続被保険者として法定健康保険（GKV）に加

る。ドイツ人の 10％強が民間医療保険（PKV）に加

入し続けるか、民間の医療保険を選択することがで

入している。民間医療保険（PKV）には基本的に契

きる。収入が強制保険限度額以下であっても、公務

約の自由がある。申請者は、自分の好きな民間保

員や自営業者のように、法定健康保険（GKV）の強

険会社に加入を申請することができ、保険会社は既

制保険の対象外となるグループもある 2）。

往症や年齢を理由に加入を拒否することができる。
必要であれば、保険料にリスクサーチャージを課

法定健康保険（GKV）はドイツの医療制度の中心

す、あるいは既往症の給付を除外するなどの条件

的な柱であり、社会保険の中で最も古い分野であ

を付けて契約を締結するのみである。ただし、基本

る。1883 年 6 月 15 日、「労働者健康保険法」が制

料金表の保険加入条件を満たし、この料金表で保

定され、誕生した。それ以降、産業労働者や工芸・

険に加入している人は例外である。なお、民間医療

貿易企業の従業員は、健康保険に加入することが

保険（PKV）に加入している市民は、民間の強制介

義務づけられ、健康保険料は、労働者が 3 分の 2、

護保険にも加入しなければならない 4）。

雇用主が 3 分の 1 を負担した。こうしてドイツは、国
家レベルで社会保険を導入した最初の国となった。

２.連邦政府と州政府、運営組織 2）
社会保険の適用範囲は、国によって決定される。

それ以来、法定健康保険（GKV）制度は包括的

医療の枠組み条件と課題の設定は国が法律や条

な社会保障制度へと拡大され、それぞれの時代の

例が制定し、決定する。しかし、その後、医療がどの

課題に適応してきた。社会保険制度が始まった当

ように組織され、設計され、とりわけ、どの治療、手

199