【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (10 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
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第三版
はじめに
1.
(1) 策定の経緯
抗微生物薬注1は現代の医療において重要な役割を果たしており、感染症の治癒、患者の予後の
改善に大きく寄与してきた 1。その一方で、抗微生物薬には、その使用に伴う有害事象や副作用
が存在することから、抗微生物薬を適切な場面で適切に使用することが求められている 1。近年、
そのような不適正な抗微生物薬使用に伴う有害事象として、薬剤耐性菌とそれに伴う感染症の増
加が国際社会でも大きな課題の一つに挙げられるようになってきている 1。不適正な抗微生物薬
使用に対してこのまま何も対策が講じられなければ、2050 年には全世界で年間 1,000 万人が薬
剤耐性菌により死亡することが推定されており、2019 年時点で既に薬剤耐性菌が関連した死亡
者が年間約 490 万人、薬剤耐性菌が原因による死亡者数が約 120 万人と推計されている 2-4。ま
た、1980 年代以降、新たな抗微生物薬の開発は減少する一方で、病院内を中心に新たな薬剤耐
性菌の脅威が増加していること 1 から、抗微生物薬を適正に使用しなければ、将来的に感染症を
治療する際に有効な抗菌薬が存在しないという事態になることが憂慮されている 5。今の段階で
限りある資源である抗菌薬を適正に使用することで上記の事態を回避することが重要であり、薬
剤耐性(Antimicrobial Resistance: AMR)対策として抗微生物薬の適正使用が必要である。
2015 年 5 月に開催された世界保健総会では、薬剤耐性対策に関するグローバルアクションプ
ランが採択され、それを受けて日本でも 2016 年 4 月に薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン
(2016-2020)を策定し、2023 年 4 月に薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)
を更新した 1。その中でも、抗微生物薬の適正使用は、薬剤耐性対策として、日頃の臨床の現場
で医療従事者及び患者を含む医療に関わるすべての者が対応すべき最重要の分野の一つとしてい
る 1。
日本における抗微生物薬使用量については、処方販売量を基にした研究において、人口千人あ
たりの抗菌薬の 1 日使用量が 10.22DID(DDDs: Defined Daily Doses/1,000 inhabitants/day)注2
との試算が示されており、そのうち 90.1%が経口抗菌薬と報告されている 6。また、諸外国との
比較から、日本では、経口の第 3 世代セファロスポリン系抗菌薬、フルオロキノロン系抗菌薬、
マクロライド系抗菌薬の使用量が多いことが指摘されている 1。日本の医療現場における抗微生
注1
抗微生物薬等については、以下の様な詳細な定義があるものの、実際の医療では、抗菌薬、抗生物質、抗生剤の三つの用
語は細菌に対して作用する薬剤の総称として互換性をもって使用されている。(以下、日本化学療法学会抗菌化学療法用語
集、薬剤耐性[AMR]対策アクションプラン等を参照した。
)
抗微生物薬(antimicrobial agents, antimicrobials):微生物(一般に細菌、真菌、ウイルス、寄生虫に大別される)に対
する抗微生物活性を持ち、感染症の治療、予防に使用されている薬剤の総称。ヒトで用いられる抗微生物薬は抗菌薬
(細菌に対する抗微生物活性を持つもの)、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬を含む。
抗菌薬(antibacterial agents):抗微生物薬の中で細菌に対して作用する薬剤の総称として用いられる。
抗生物質(antibiotics):微生物、その他の生活細胞の機能阻止又は抑制する作用(抗菌作用と言われる)を持つ物質であ
り、厳密には微生物が産出する化学物質を指す。
抗生剤:抗生物質の抗菌作用を利用した薬剤を指す通称。
注2
DDD:Defined Daily Dose の略称。成人患者(体重 70kg)においてその薬剤が主な適応として使用される時の平均的な投
与量のことであり、世界保健機関は各薬剤の DDD の値を提供している。
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