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【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (92 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html
出典情報 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》
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抗微生物薬適正使用の手引き

第三版

11. 急性中耳炎


小児の急性中耳炎を診断するためには、耳痛や耳漏の訴えだけに頼らず、発熱、不機嫌、風
邪症状等を訴える患者の鼓膜所見をとることが重要である。



鼓膜発赤のみで膨隆がない場合は、原則として急性中耳炎と診断しない。



中耳由来の耳漏を認める急性中耳炎には、抗菌薬の投与が推奨される。



発熱、不機嫌、耳痛等があり、発赤と膨隆を伴う鼓膜所見がある場合は、抗菌薬投与を考慮
する。



鼓膜所見を認める場合でも、急性中耳炎は自然軽快する可能性が有り、年齢、基礎疾患等の
患者リスク、中耳の局所炎症所見、全身状態等の程度を考慮し、軽症で重症化のリスクが低
いものは抗菌薬を投与せず 2-3 日の経過観察を検討する。

【抗菌薬に関する推奨】





急性中耳炎の第一選択薬はアモキシシリンである。



耳鼻咽喉科医との連携が重要な疾患である。

本稿は中耳炎の疑われる小児に対して、一般診療医が抗菌薬投与の必要性を判断するための基準と初期選択薬を記した。

難治例や耐性菌による感染症等複雑な症例については学会のガイドライン等を参照されたい。

(1) 急性中耳炎とは
耳痛、発熱、耳漏を伴うことがある急性に発症した中耳の感染症と定義される 105。急性中耳
炎は、耳管経由で中耳腔にまで炎症,感染が波及して生じる。主たる原因菌は 、肺炎球菌と
Haemophilus influenzae であり、次いで Moraxella catarrhalis が原因となる。
なお、滲出性中耳炎とは、急性炎症症状(耳痛や発熱)を伴わず、鼓膜穿孔もなく、中耳腔に
液体貯留液を認める難聴の原因になるものと定義 106 され、急性中耳炎とは異なる。また、滲出
性中耳炎自体に対する抗菌薬投与の適応はない。

(2) 急性中耳炎の疫学
急性中耳炎は 1 歳までに 75%が罹患、7 歳までに 40%が 4 回以上罹患する頻度の高い感染症で
ある 107,108。
乳幼児に多い理由として、解剖学的要因と免疫学的要因が挙げられる。解剖学的要因として、
成人の耳管は約 45 度と傾斜が高く細長いのに対し、小児の耳管は約 10 度と傾斜が低く,太く短
いため,上咽頭(鼻腔)から炎症が波及しやすく,急性中耳炎を発症しやすいことが挙げられる。
免疫学的要因としては、特に生後 6 か月から 2 歳までは肺炎球菌や H. influenzae に対する特異的
抗体が低いため,易感染性となることが報告されている 108-111。また、乳幼児は自分で鼻をかむ
ことができず,ドレナージ不良が起きやすいことも一因とされる。その他に周囲の喫煙や非母乳
栄養等が発症のリスクを上げるとされる。

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