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【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (86 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html
出典情報 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》
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抗微生物薬適正使用の手引き

第三版

10. 急性下痢症


急性下痢症は、便性と便量の異常のことである。嘔吐腹痛等の腹部症状や発熱を伴うことが
ある。



小児急性下痢症の原因となる微生物は、本邦ではウイルスが大半である



小児急性下痢症では、原因診断より重症度の判断が重要である。迅速に緊急度判断を行い、
脱水と判断したならば、早期に経口補水療法を開始する。

【抗菌薬に関する推奨】


急性下痢症の原因がウイルス性の場合、抗菌薬は不要である。



健常者における軽症の細菌性腸炎疑い症例には、抗菌薬を投与しないことを推奨する。



生後 3 か月未満の細菌性腸炎、免疫不全者、重症で敗血症合併が懸念される場合は、抗菌薬
投与を検討される。

(1) 急性下痢症とは
急性下痢症は、軟便もしくは水様便といった便性の異常が、24 時間以内に 3 回以上の回数 86
や、通常の倍以上の回数 87、通常の倍以上の量(乳児では 10mL/kg/日以上、乳児以降では
200g/24 時間以上)88 認められるものと定義される。多くは嘔吐が下痢に先行するが、下痢のみ
の場合や、特に年少児では嘔吐のみの場合もある。腹痛、発熱の合併を認めることがある。年少
児の方が症状の進行は早いが、症状の程度には個人差がある。感染性の要因としてウイルス性と
細菌性があるが、日本を始め先進国では、圧倒的にウイルス性が多い。

(2) 急性下痢症の疫学
日本では、冬季に流行し、その大半はノロウイルス等のウイルス感染が原因と推測される 89。
ノロウイルスは、小児の感染性胃腸炎原因の 1 位(ないし 2 位)を占める(12%)90。ワクチン
の導入前では、ロタウイルスは先進国、発展途上国関係なく 3 歳までに 90%が罹患する疾患で、
ロタウイルスワクチンは先進国では約 90%のロタウイルスによる重症下痢症の予防効果がある。
日本では、2011 年 1 月よりロタワクチンの任意接種が始まり、2020 年より定期接種化された。
2013 年 10 月より基幹定点からのロタウイルス胃腸炎の患者届出が始まった。ロタウイルス胃腸
炎患者サーベイランスでは、2010/11~2012/13 シーズンと比較して、2013/14、2014/15 シーズ
ンのロタウイルス胃腸炎患者数は減少傾向と報告されている 91。2020 年の定期接種化以降は、
さらに激減して稀な疾患となった 92。

(3) 診断と鑑別
小児の急性下痢症では、原因がウイルス性かどうかを判断することが必要である。嘔吐で始ま
り、臍周囲の軽度から中等度の腹痛や圧痛がある、血便がなく水様性下痢である、発熱がない
(ないし微熱)、激しい腹痛がない、家族・周囲集団に同様の症状がある、といった症状、徴候
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