【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (64 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
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第三版
図 3. Pediatric Assessment Triangle (PAT)
西山和孝 PAT を用いたトリアージの有用性
医学書院第 2865 号 2010 年を参考に作成
また、急性気道感染症を診断した場合でも、その合併症や鑑別を身体所見から除外する必要性
は高い。具体的には、細菌性副鼻腔炎や中耳炎の合併症としての眼窩蜂窩織炎や乳突洞炎、咽頭
炎の鑑別としての深頸部膿瘍、クループ症候群の鑑別として急性喉頭蓋炎や細菌性気管炎、下気
道感染症における細菌性肺炎の合併等が挙げられる。通常の自然経過を知り、改善が乏しい場合
あるいは二峰性の経過をたどる場合は精査を検討する。適切な検査や診断に基づいて抗菌薬治療
の適応を判断する必要があり、安易に発熱のみだけでは、抗菌薬治療の適応にならない。
さらに、急性気道感染症を診断した場合でも、乳幼児においては異なる病態が混在しているこ
とがある。乳幼児において頻度が高いのは、急性中耳炎、尿路感染症、潜在性菌血症が挙げられ
る。急性中耳炎は小児の診察の一環として鼓膜の所見を取ることで除外する。臨床経過や所見が
他の有熱性疾患に矛盾しない場合には、尿路感染症の除外検査は必要ないが、高熱を呈し他の所
見に乏しい場合は尿検査等を考慮する。発熱を呈している一見元気な生後 3 か月から 36 か月の
乳幼児では、明らかな所見がなくとも一定の割合で、肺炎球菌や H. influenzae による菌血症をき
たし、約 7%は細菌性髄膜炎等の重症感染症になることが過去に報告されてきた 6。このような
状 態 を 潜 在 性 菌 血 症 (occult bacteremia) と 呼 び 、39.5℃ 以 上 の 高 熱 、 高 白 血 球 血 症
(15,000/μL)のある患者については、5~10%のリスクがあるとされ、血液培養を採取して抗菌
薬投与を推奨する診療もかつては行われていた。しかし肺炎球菌ワクチンやヒブワクチン導入後
は、リスクが大幅に減少したため、これらのワクチン歴のある患者については必ずしも行う必要
はない。
丁寧な問診と診察に基づいて細菌感染症の鑑別を行い、保護者に病状と疾患の自然経過を説明
し、再受診の目安について情報提供を行うことが重要である。なお、本手引きは、外来での小児
診療において、抗菌薬が必要な病態と不必要な病態を明らかにすることに主眼を置いているため、
抗菌薬の適応となる細菌感染症の治療法を網羅した内容とはなっていない。その点については、
学会による指針等を参照頂きたい。
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