【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (88 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
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第三版
(4) 治療方法
急性下痢症への治療は、1) 脱水への対応、すなわち経口補水療法(Oral Rehydration Therapy:
ORT)や経静脈的輸液が重要であり、2) プロバイオティクスについて検討し、3)抗菌薬を安易
に使用しないことが求められる 93,94。
脱水への対応
(i)
急性下痢症と判断した場合、まず重症度の判断が重要であり、重症度に最も影響するのが、脱
水の有無である。
小児は、体重あたりの水分必要量が多いことと、水分や食事の摂取が自立していないため、そ
の供給を他者(特に保護者)に依存していることから、脱水へのケアが重要であり 93,95、速やか
に評価し対応する必要がある。
輸液療法を要することが多い体重の 5%以上の脱水(体重減少)、またそれ以上の重症脱水を
見逃さないことが重要である 96。①毛細血管再充満時間(Capillary Refill Time: CRT
指の爪床
を 5 秒間圧迫した後に圧迫を解除。圧迫解除後、爪床の色が元の色に戻るまでの時間)が 2 秒以
上、②粘膜の乾燥、③流涙なし、④全身状態の変化の 4 項目のうち 2 項目陽性であれば、5%以
上の脱水を示唆するとされている(LR+6.1;95%信頼区間 3.8-9.7)96。
経静脈的輸液が必要になる危険性が高い者は、生後 6 か月以下、低出生体重児、慢性疾患、生
後 3 か月未満の発熱(38℃以上)
、生後 3 か月~3 歳で高熱(39℃以上)、血便、持続する嘔吐、
尿量の減少、眼窩の陥凹、そして意識レベルの低下である 93。
経口補水液(oral rehydration solution: ORS)は、急性下痢症に対する世界標準治療である 95。
その有効性だけではなく、血管確保が不要で児への負担も少ないという利点も大きい 95。脱水の
ない状況における脱水予防と、軽度から中等症の脱水に対する治療として推奨されている 95。
具体的には、できるだけ早期に(脱水症状出現から 3~4 時間以内)
、少量(ティースプーン 1
杯程度)から徐々に増量しつつ、脱水量と同量(軽症から中等症脱水ならば 50~100mL/kg)を
3~4 時間で補正することが重要である。
(ii)
プロバイオティクス
英国診療ガイドライン 94、欧州小児栄養消化器肝臓学会の 2014 年ガイドライン 95 では、急性
下痢症に対して小児では下痢の期間と頻度を減らすとして使用推奨がなされた。一方その後、複
数の検討では有用性が示されなかったことを受けて、欧州小児栄養消化器肝臓学会は 2020 年に
は推奨レベルを下げている。しかし、使用する製剤の国家間での相違もあり、直ちに使用を否定
するほどの強いエビデンスがあるわけではない。以上より、本手引きでは現時点でのエビデンス
に基づき、一律使用に関する推奨はしないこととする 96-100。
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