【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (68 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
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第三版
膿性鼻汁を認める小児に抗菌薬投与が行われることがあるが、急性上気道炎患者あるいは膿性
鼻汁のある患者に対する抗菌薬と偽薬群(プラセボ薬)との比較で有効性を検討した無作為化比
較試験をまとめた系統的レビュー17 によると、小児と成人を対象とした 6 つの検討、あるいは小
児を対象とした 2 つの無作為化比較試験では、第 7 病日における症状改善率に差を認めなかった。
また、成人を対象とした 4 つの無作為化比較試験における有害事象の頻度は、抗菌薬投与群で相
対危険度が 2.62(95%信頼区間 1.32-5.18)と高かった 17 が、小児を対象とした 2 つの無作為化
比較試験では相対危険度は 0.91(95%信頼区間 0.51-1.63)と差が認められなかった 17。また、4
つの無作為化比較試験では膿性鼻汁の発生についても相対危険度 1.46(95%信頼区間 1.10-1.94)
と有意な差は認められなかった 17。直近で 2~11 歳の小児を対象に行われたランダム化比較試験
においても、黄色又は緑色の鼻汁の有無で抗菌薬の有用性に差を認めなかったと報告されている。
※したがって、膿性鼻汁を認めるだけでは、原則、抗菌薬は不要である 26,27。
【抗菌薬投与が不適切と考えられる基準】
以下をすべて満たす患者にはその時点で抗菌薬は必要ない
鼻汁
鼻閉 ± 発熱 ± 軽い咳
呼吸障害がない
全身状態が良い
熱の持続期間が 3 日以内
鼻汁の持続期間が 10 日以内
湿性咳嗽の持続期間が 10 日(2 週間)以内
感冒・鼻副鼻腔炎が遷延し、化膿性合併症をきたす可能性はあり、その見極めは重要である。
化膿性副鼻腔炎は、通常、副鼻腔の発達した学童以降に多く、頬部の発赤、疼痛、鼻閉等を伴う
ことが指摘されている 28。また、湿性咳嗽を 10 日以上呈する症例、すなわち化膿性副鼻腔炎あ
るいは遷延する気管支炎に該当する小児症例を含んだ検討では、抗菌薬投与による症状改善が認
められている 29。140 名の患者を含む 2 つの研究では、抗菌薬未投与群に比して抗菌薬投与群に
おける臨床的な治療失敗例のオッズ比は 0.13(95%信頼区間 0.06-0.31)であった。
【抗菌薬投与を考慮すべき状態】
以下のいずれかに当てはまる場合、遷延性又は重症と判定する。
1.
10 日間以上続く鼻汁・後鼻漏や日中の咳を認めるもの。
2.
39℃以上の発熱と膿性鼻汁が少なくとも 3 日以上続き重症感のあるもの。
3.
感冒に引き続き、1 週間後に再度の発熱や日中の鼻汁・咳の増悪が見られるもの。
日本鼻科学会の指針では、化膿性副鼻腔炎に対する処方例として、アモキシシリン
40mg/kg/日(分 3)7~10 日間と示されている。
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