【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (30 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
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第三版
症例については、セファロスポリン系抗菌薬投与群の方が統計的に有意に少なかった(オッズ比
0.42 倍 95%信頼区間 0.20-0.88 倍)ものの、治療必要数(NNT)注10は 33 と絶対リスク差は大き
くないことが報告されている 76。これらの安全性、有効性及び抗菌薬としての狭域性等も踏まえ、
各学会の指針ではペニシリン系抗菌薬が第一選択薬として推奨されている 17,21,49。アモキシシリ
ンの添付文書では「1 回 250mg を 1 日 3-4 回経口投与する。ただし、年齢、体重、症状等に応じ
て適宜増減する。
」と記載されている。なお、各学会の指針では、GAS による急性咽頭炎の場合
の用量はアモキシシリン 1 回 1,000 mg を 1 日 1 回又は 1 回 500mg を 1 日 2 回とされている 17,21。
治療期間については、短期間治療の有効性を支持する科学的知見は乏しく、欧米の学会の指針で
は 10 日間の治療が推奨されている 17,48。
IDSA の指針では、軽症のペニシリンアレルギーがある場合には、経口第 1 世代セファロスポ
リン系抗菌薬のセファレキシンが、重症のペニシリンアレルギー(アナフィラキシーや重症薬疹
の既往)がある場合には、クリンダマイシンが推奨されている 17。日本では、セファレキシン及
びクリンダマイシンは咽頭炎を適応症として薬事承認されており、それぞれの薬剤について、
「通常、成人及び体重 20kg 以上の小児にはセファレキシンとして 1 回 250mg(力価)を 6 時間
ごとに経口投与する。重症の場合や分離菌の感受性が比較的低い症例には 1 回 500mg(力価)を
6 時間ごとに経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。」、また、「通常、成
人はクリンダマイシン塩酸塩として 1 回 150mg(力価)を 6 時間ごとに経口投与、重症感染症に
は 1 回 300mg(力価)を 8 時間ごとに経口投与する。小児には体重 1kg につき、1 日量 15mg
(力価)を 3-4 回に分けて経口投与、重症感染症には体重 1kg につき 1 日量 20mg(力価)を 34 回に分けて経口投与する。ただし、年齢、体重、症状等に応じて適宜増減する。」とされてい
る。なお、IDSA の指針では、軽症のペニシリンアレルギーがある場合にセファレキシンは 1 回
500mg を 1 日 2 回が、重症のペニシリンアレルギーがある場合にクリンダマイシンは 1 回 300mg
1 日 3 回が推奨されている 17。
このようなことから、本手引きでは、迅速抗原検査又は培養検査で GAS が検出された急性咽
頭炎に対して抗菌薬投与を検討することを推奨することとし、その際には、アモキシシリンを
10 日間経口投与することとする。
小児についても、日本小児呼吸器学会・日本小児感染症学会の指針では、GAS による急性咽
頭炎に対してはアモキシシリンが第一選択抗菌薬とされており、10 日間の治療期間が推奨され
ている 65。小児の GAS 咽頭炎に対する抗菌薬として、ペニシリン系抗菌薬 10 日間(対照群)と
ペニシリン系抗菌薬以外の抗菌薬 4-6 日(短期治療群)の治療を比較した研究によると、短期治
療群で症状消失は有意に早いものの再燃率は高かったことが報告されている 77。また、この研究
では、副作用についてはペニシリン系抗菌薬群の方が少なく、リウマチ熱・腎炎の合併率につい
ては有意な差はなかったと報告されている 77。アモキシシリン 10 日間及びセファロスポリン系
抗菌薬 5 日間を用いた、GAS による急性咽頭炎後の除菌率及び再発率を比較した日本における研
注10
治療必要数(NNT)とは:一つの結果が起こるのを防ぐために必要な治療を受ける患者数のこと。
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