【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (20 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
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第三版
一般外来における成人・学童期以降の小児編
4.
急性気道感染症
(1) 急性気道感染症とは
急性気道感染症は、急性上気道感染症(急性上気道炎)及び急性下気道感染症(急性気管支炎)
を含む概念であり、一般的には「風邪」
、
「風邪症候群」、
「感冒」等の言葉が用いられている 1,2。
「風邪」は、狭義の「急性上気道感染症」という意味から、「上気道から下気道感染症」を含
めた広義の意味まで、様々な意味で用いられることがあり 3、気道症状だけでなく、急性(ある
いは時に亜急性)の発熱や倦怠感、種々の体調不良を「風邪」と認識する患者が少なくないこと
が報告されている 4。患者が「風邪をひいた」と言って受診する場合、その病態が急性気道感染
症を指しているのかを区別することが鑑別診断のためには重要である。
(2) 急性気道感染症の疫学
厚生労働省の患者調査(2020 年 10 月実施)では、急性上気道感染症注4による 1 日あたりの外
来受療率は 128(人口 10 万対)と報告されている 5。また、1960 年代に米国で行われた研究で
は、急性気道感染症の年間平均罹患回数は、10 歳未満で 3-7 回、10-39 歳で 2-3 回、40 歳以上で
1-2 回 6、オーストラリアで行われた全国調査でも、気道感染症罹患の予測確率は年齢とほぼ線形
の関連があり、年齢が高くなればなるほど罹患する確率が低いこと 7 が報告されている。
一方で、在宅医療を受けている 419 人の 65 歳以上の高齢者を対象とした日本で行われたコホ
ート研究によると、年間 229 件の発熱例のうち普通感冒はわずかに 13 件であったことが示され
ている 8。このことから、高齢者が「風邪をひいた」として受診してきた場合、「その病態は本当
に急性気道感染症を指しているのか?」について疑問に持って診療にあたる必要がある。
急性気道感染症の原因微生物の約 9 割はライノウイルスやコロナウイルスといったウイルスで
あることが報告されている 6,9。急性気道感染症において、細菌が関与する症例はごく一部であり、
急性咽頭炎における A 群 β 溶血性連鎖球菌(Group A β-hemolytic Streptococcus spp.: GAS)、急
性気管支炎におけるマイコプラズマやクラミジアが代表的な原因微生物であることが報告されて
いる 6,9。
これらの急性気道感染症の原因微生物であるウイルスに、慢性心疾患や慢性肺疾患がある高齢
者が罹患した場合には、ウイルス性気道感染症であっても呼吸困難を伴いやすく、入院が必要に
なることも稀ではないことが示唆されている 10,11。
注4
国際疾病分類第 10 版(ICD10)において J00~J06 に分類される疾病。
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