【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (119 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
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第三版
② 治療期間の考え方と注意点
A)
治療期間の決定に係る因子
治療期間の決定には臨床病態の推定・把握が欠かせない 66。そのために把握しておく事項につ
いて、表 6 にまとめた。
まず、患者の基礎疾患等の背景因子を把握する。高度の免疫不全が存在する場合には短期治療
を適用しづらい場合もある。また、固形臓器腫瘍が背景にある場合は、腫瘍による気道や胆道の
狭窄・閉塞、手術・放射線治療による変化等、解剖学的な異常に伴う感染症の難治化が起こりや
すい 67,68。
次に、どの「臓器」に感染が生じているかを可能な限り明確にする。例として、男性において
高熱を伴う UTI は腎盂腎炎・前立腺炎が一般的だが 69、このうち前立腺炎は薬剤移行の悪さ等か
ら 2-4 週間程度の治療期間を推奨する専門家もいる 70。男性の有熱性 UTI(前立腺炎も含まれる)
では 7 日間治療が 14 日間治療に対して劣性と報告する RCT もある 63。
原因微生物とその薬剤感受性も重要である。VAP においてはガイドライン上 7 日間の治療が推
奨されている 71。ただし、緑膿菌による VAP に関する RCT では、短期治療(8 日間)が長期治
療(15 日間)に対する非劣性を示せなかった報告もある 72。また、高度薬剤耐性菌に対し、第一
選択ではない抗菌薬を使用する場合も、治療期間については慎重に検討すべきである。その他、
外科的介入や、治療期間の延長が必要となるため、膿瘍等の局所の感染性合併症や感染性心内膜
炎等の血管内感染症を含めた遠隔の感染性合併症の有無についても評価が必要である。また、人
工物に感染が及んでいる場合、除去/抜去ができているかも治療期間を考える上で重要である。
さらに、黄色ブドウ球菌やカンジダの菌血症および血管内感染症の治療にあたっては血液培養
の陰性化を確認する 6,73,74。
治療への反応は、解熱や血行動態(バイタルサイン)の安定化に加え、食事摂取量等の全身状
態の変化や採血所見の変化、感染臓器に特異的な症状所見の変化を参考にして評価する。治療へ
の反応が緩徐な症例においては短期治療の適用を見送る場合もある 75。
表 6. 治療期間を決めるにあたり把握すべき事項
患者の基礎疾患等の背景因子:特に免疫不全や解剖学的な変化/異常
感染臓器
原因微生物とその感受性
膿瘍、膿胸、化膿性血栓等局所の感染性合併症はないか
遠隔の感染性合併症(関節炎、椎体椎間板炎、感染性心内膜炎等)はないか
カテーテル等の人工物に感染が及んでいないか、及んでいる場合は除去/抜去できているか
血流感染症例、特に黄色ブドウ球菌・カンジダによる血流感染、CRBSI を含む血管内感染症
では、血液培養の陰性化が確認できているか
抗微生物薬治療への反応は良いか(概ね 72 時間程度の時点で評価)
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