【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (109 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
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第三版
適切な培養の実施
(ii)
要旨
臨床症状のない患者に対して培養検査を行わない。
入院 72 時間以上経過した後に発症した下痢症に対して便培養検査を行わない。
抗菌薬投与前と、広域抗菌薬に変更前は必ず血液培養検査を提出する。
原則として、感染症の治療効果判定として培養検査を再検しない。
① 培養検体採取時の注意点
臨床症状のない患者に対して培養検査を行わない(呼吸器症状のない患者の痰培養検査等)。
感染症が疑われる患者に抗菌薬を投与する際は、投与前に必ず培養検査を提出する。臨床症状の
改善に乏しく、既に開始されている抗菌薬を変更する場合も、培養検査の提出が望ましい。
痰は唾液成分が少なく、膿性部分が多いものが培養に適している。唾液成分しかない不良検体
を培養検査に提出しない。
尿は、中間尿又は導尿での採取が推奨される。尿道留置カテーテルが挿入されている患者で
UTI を疑った場合には、可能であればカテーテルを入れ替えてから尿検体を採取することが望ま
しい。尿沈渣でも白血球が見られなければ、尿培養を提出しない。
便は下痢便のみ培養に提出する。耐性菌スクリーニング検査以外で固形便を提出してはいけな
い。入院 72 時間以上経過した後に発症した下痢症では CDI の頻度が高いため、通常の便培養で
はなく、CDI の検査を行う(C. difficile の項目参照)3。
膿汁は、既に空気に触れている開放膿と空気に触れていない閉鎖膿に分けられる。閉鎖膿の場
合、嫌気性菌の関与も考えられるため、嫌気培養も提出する。糖尿病足壊疽等の創部培養を提出
する際は、創部表面ではなく壊死組織をデブリドマンした後のなるべく深部の液体や組織を検体
として提出することが推奨されている 8。創部表面の培養に関しては常在菌を拾い上げてしまう
こともあり、解釈が難しい。
② 血液培養を採取すべきタイミング
抗菌薬投与開始前と、既に投与中で広域抗菌薬に変更する前には必ず血液培養を採取する。発
熱、悪寒戦慄、原因不明の低体温、原因不明のショック、原因不明の意識障害、原因不明の炎症
反応上昇等でも血液培養を採取する。1 セットあたり 20mL(好気ボトル 10mL、嫌気ボトル
10mL)の血液を採取し、原則 2 セット以上採取する。成人の入院患者を対象にした研究では血
液培養 1 セット、2 セット、3 セット採取時の陽性率はそれぞれ 73.1%、89.7%、98.2%である 9。
③ その他
原則、感染症の治療効果判定として培養検査を再検しない。例外は、感染性心内膜炎等の血管
内感染症、又は血液から黄色ブドウ球菌あるいはカンジダが検出された場合である。これらの状
況では、治療効果判定として治療開始後に必ず血液培養を再検すべきである(「黄色ブドウ球菌」、
「カンジダ」の項参照)
。なお、肺炎における喀痰や UTI における尿等、グラム染色で菌の減少
や消失を見ることにより治療効果判定を行うことができる場合もある。
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