【参考資料4】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 本編 (35 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
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5.
第三版
急性下痢症
(1) 急性下痢症とは
急性下痢症は、急性発症(発症から 14 日間以内)で、普段の排便回数よりも軟便又は水様便
が 1 日 3 回以上増加している状態と定義されている 97,98。急性下痢症の 90%以上は感染性、残り
の 10%程度は薬剤性、中毒性、虚血性、その他非感染性であり、全身性疾患の一症状として下
痢を伴うこともあると指摘されている 99。感染性の急性下痢症は、吐き気や嘔吐、腹痛、腹部膨
満、発熱、血便、テネスムス(しぶり腹。便意が頻回に生じること)等を伴うことがある 98 が、
急性感染性下痢症は、「胃腸炎」や「腸炎」等とも呼ばれることがあり、中には嘔吐症状が際立
ち、下痢の症状が目立たない場合もあることが指摘されている 98。
(2) 急性下痢症の疫学
感染性胃腸炎の非流行期(2020 年 10 月)に行った厚生労働省の患者調査では、腸管感染症注12
の 1 日あたりの外来受療率は 16(人口 10 万対)と報告している 5。
急性下痢症の大部分はウイルス性であり 100、冬季に流行するノロウイルスやロタウイルス等
が代表例とされている 101 が、日本では 2011 年よりロタウイルスワクチンの任意接種が始まり、
2020 年には定期接種となった。ワクチンの任意接種開始後、基幹定点からの届出によるサーベ
イランスではロタウイルスによる下痢症は減少傾向にあったが 102、定期接種化以降は、さらに
激減して稀な疾患となった 103。
急性下痢症の原因となりうる細菌としては、非チフス性サルモネラ属菌、カンピロバクター、
腸管出血性大腸菌、ビブリオが代表的であるとされる 100 が、海外からの帰国者の下痢症では腸
管毒素原性大腸菌やカンピロバクターも多く、稀に赤痢菌やコレラ菌が検出されることもあるこ
と 104、また、最近の抗菌薬投与歴がある場合にはクロストリディオイデス・ディフィシル腸炎
を考慮する必要があること 104 も指摘されている。なお、腸チフス、パラチフスに関しては下痢
を伴わないことが多いとされている 105。
(3) 急性下痢症の診断方法及び鑑別疾患
急性下痢症の原因推定のための重要な情報としては、発症時期、随伴症状(発熱、腹痛、血便
の有無)、疑わしい摂食歴、最近の海外渡航歴、抗菌薬投与歴、免疫不全の有無、同じような症
状の者との接触歴等が挙げられており 100、特に嘔吐が目立つ場合には、ウイルス性の感染症や
毒素による食中毒の可能性が高いと指摘されている 106。集団発生の場合、ウイルス性では潜伏
期間が 14 時間以上(通常 24-48 時間)
、食中毒では 2-7 時間のことが多く、両者の鑑別に役立つ
と指摘されている 106。
吐き気や嘔吐は、消化器疾患以外(急性心筋梗塞、頭蓋内病変、敗血症、電解質異常、薬剤性
等)でも伴うことがあるとされており 107,108、急性胃腸炎の診断で入院した患者のうち約 3 割が
注12
ICD10 コードにおいて A00-A09 をまとめたもの。
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