２ 労働時間と脳・心臓疾患の発症等に関する文献（疫学調査） （２）心臓疾患に関するもの（27文献）
調査期間
（発病前）

時間

観察期間

疾病

調査対象

調査方法

18

週あたり35-40時間、
国勢調査前4
41-8時間、49-54時間、
週間
55時間以上

2001年から2009年
死亡
まで

2001年の英国国勢調査時
に20-59歳または64歳（公的
な退職年齢）であったフルタ 前向きコホート
イム雇用の男女コホートの 研究
うち、414,949人（男性
270,011人、女性144,938人）

19

40時間/週（8時間/日）
を超える文献、平均労
働時間に1標準偏差
（SD）を加えた時間が40
時間/週以上（8時間/
日）の文献

1995-2012年に
MedlineとPsycINFO で検索、抽出

合計17の論文と19の研究
（12の前向きコホートと7つ
の横断研究）

20

残業時間は、<45、≥45
及び<60、≥60及び<80、
過去2－3か月 記載なし
≥80及び<100及び≥100
時間/月

21

「時間外労働無し」、「時
間外労働あり、有償」、
「時間外労働あり、無
2011年から2013年
2011年に質問
心疾患の発症
償」
まで
時間外労働は自己申告
による。

22

各文献の基準

23

各文献の基準

24

1日の労働時間により
短時間（7時間未満）、
標準（7-9時間未満）、
1-2時間の時間外労働
（9-11時間未満）、
3時間以上の時間外労
働（11時間以上）
に区分分け

-

-

ベースライン
時（1993年）と
10年目フォ
ローアップ時
（2003年）の労
働時間の平均

-

レビュー

動脈硬化（心臓足
首血管指数
（cardio-ankle
日本人労働者3,862人（26横断研究
vascular index
59歳）
:CAVI） ≥9.0が 動脈
硬化ありと定義）

-

PubMed検索（2005
年1月）12文献

心疾患を有さないドイツの
労働者6,345人（男性3,079
人、女性3,266人）

コホート研究

調整因子

結果

有意性

著者名

タイトル

書誌情報

職業階層を考慮しない男女別の解析の結果、いずれ
の労働時間も、総死亡率との有意な関連は見られな
かった。
職業階層（管理職、中間職、自営業、単純労働職）別の
解析の結果、男性では、55時間/週以上労働の単純労
年齢、配偶者の有無、扶養して
働職のみ総死亡のリスクの増加と関連していた
いる子供の数、介護義務の有
（HR1.31、95%CI: 1.11-1.55）。単純労働職の死因別解
無、職業階層、長期の病気と一
析では、全心血管疾患（HR1.49、95%CI: 1.10-2.00）虚
般的な健康の制限の有無
血性心疾患（HR1.53、95%CI: 1.08-2.17）、脳血管疾患
（HR2.65、95%CI: 1.28-5.50）等による死亡リスクも有意
であった。女性では、いずれの職業階層でも、労働時
間と総死亡、死因別の死亡に有意な関連は見られな
かった。

-

循環器疾患及び冠動脈性心疾患に関する結果は論文
なし
間で一致しなかった。

岩崎 健
二

長時間労働と健康問題

残業時間、定期的な運動、年
齢、体重分類（BMIによりやせ、
正常、過体重、肥満に群分け）、
糖尿病、脂質異常症、高血圧、
喫煙習慣、脈拍数

全体では、平均CAVIと残業時間の間に有意な関連は
見られなかった。CAVI≥9.0のオッズ比は、次のとおりで
あった；≥45及び<60時間/月：OR1.11（95%CI: 0.731.69）、≥60及び<80時間/月：OR0.92（95%CI: 0.48なし
1.76）;80時間以上及び100時間未満/月：OR1.50
（95%CI: 0.50-4.49）、≥100時間/月OR2.65（95%CI: 0.828.54）。

Hata K,
et al

Relationship between overtime
work hours and Cardio-ankle
J Occup Health.
Vascular Index (CAVI): Across- 2014; 56: 271-278
sectional study in Japan

モデル1：年齢、性別、婚姻状
況、学歴、雇用形態
モデル2：モデル1の調整変数と
喫煙状況、アルコール摂取、運
動量、BMI
モデル3：モデル2の調整変数と
うつ状態、糖尿病、高血圧

「時間外労働あり、無償」の「時間外労働無し」に対する
相対危険度（RR）は、モデル1では1.84（95%CI: 1.05The role of compensation in
3.22）、モデル2では1.83（95%CI: 1.04-3.22）、モデル3で
explaining harmful effects of
は1.85（95%CI: 1.05-3.25）であった。
なし（時間外労 Li J &
overtime work on self-reported Am J Ind Med.
「時間外労働あり、有償」については有意差がなかっ
働あり、有償） Siegrist J heart disease: Preliminary
2018; 61: 861-868
た。
evidence from a Germany
層別解析では女性（2.73（95%CI: 1.39-5.38））及び収入
prospective cohort study
が低い場合（3.68（95%CI: 1.81-7.48））にリスクが高いと
示された。男性、高収入は有意差なし。

なし
（単純労働職の
長時間労働（55 O’Reilly
時間/週以上） D &
あり（総死亡、 Rosato M
全心血管疾患、
虚血系心疾
患））

Worked to death? A censusbased longitudinal study of the Int J Epidemiol.
relationship between the
2013; 42: 1820–
numbers of hours spent working 1830
and mortality risk

日本労働研究雑
誌. 2008; 50: 3948

1985年～2014年に発表され システマティック
た96の文献
レビュー

作業環境要因と虚血性心疾患との関連について、エビ
デンスレベルが、4（High）、3（Moderate）、2（Limited）、
１（Insufficient）の4段階で評価された。iso-strain（仕事
の負担＋仕事上の支援の低さ）、プレッシャーの高い仕
事、仕事と報酬のバランスの悪さ、職場におけるサ
ポートの低さ、秩序の無さ、スキルの裁量の欠如、不安
定な雇用、夜間労働、長時間労働、騒音については、
エビデンスレベルが2と評価された。

Theorell
T, et al

A systematic review including
meta-analysis of work
environment and depressive
symptoms

BMC Public
Health. 2015; 15:
738

-

-

長時間労働と心血管疾患を直接結びつけた研究はごく
わずかであり、その関連を強く支持する新たな科学的
エビデンスは得られなかった。労働時間は鋭敏なばく
露指標とは考えられず、ほかの測定値との併用もしく
はより鋭敏な因子の代用を検討する必要性が示され
た。

van der
Hulst M

Long workhours and health

Scand J Work
Environ Health.
2003; 29: 171-188

第1モデル：年齢
第2モデル：第1モデルの因子＋
肥満指数（BMI）（kg/m2）、高血
圧・糖尿病・高脂血症の既往
歴、喫煙、アルコールの摂取
量、歩行時間、睡眠時間
第3モデル：第2モデルの因子＋
仕事内容（給与所得者、農業/
林業/漁業労働者、自営、専門
職、複数就労者、分類不明、主
婦と失業者）

コックス比例ハザード回帰モデルを用いた結果では、
第3モデルの多変量調整後、7-9時間未満/日と比較し
て、急性心筋梗塞のHRは、7時間未満/日1.29（95%CI:
0.81–2.05）、9-11時間未満/日1.22（95%CI: 0.84–1.77）、
11時間以上/日1.63（95%CI: 1.01–2.63）であった。全脳
卒中（脳梗塞、脳出血）では、7時間未満/日1.04
（95%CI: 0.82–1.32）、9-11時間未満/日1.06（95%CI: 0.87
–1.29）、11時間以上/日0.83（95%CI: 0.60–1.13）であっ
た。

レビュー

1993年をベースラ
インとして2013年1
1993年に5つの保健所管内
急性心筋梗塞、脳
前向きコホート
月1日より前に起き
に居住していた、40–59歳の
卒中
研究
た急性心筋梗塞と
男性15,277人
脳卒中症例を追跡

126

長時間労働（11
時間以上/日） Hayashi
あり（急性心筋 R, et al
梗塞）

Working hours and risk of acute
myocardial infarction and stroke Circ J. 2019; 83:
among middle-aged Japanese
1072-1079
men