資料2 脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書 (99 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19809.html |
出典情報 | 「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を公表します(7/16)《厚生労働省》 |
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通性動脈硬化潰瘍(PAU:penetratingatherosclerotic ulcer)の三種をまと
めて急性大動脈症候群(AAS:acute aortic syndromes)としている。
一方、わが国の「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」では、潰瘍性
病変(PAU)は解離と異なる病態と位置づけているが、病理学的には粥状硬化
病変部に大動脈解離が生じることも併記されている85。この点の欧米見解との
相違は、大動脈造影、CT 及び MRI 検査から得られる臨床的な画像診断所見の
限界と、剖検による病理学的所見と臨床的な画像診断所見との比較の難しさ
や不一致等のためと考えられる。そのため、診断病名のみからは成因・病態
の判断が困難な例があることには注意を要する。
同ガイドラインでは、CT 検査等で潰瘍様突出(ULP:ulcer-likeprojection)
を認める潰瘍様突出像型大動脈解離に、潰瘍様突出像型血管内血腫、潰瘍型
血管内血腫、エントリーのない血管内血腫を含めている。この潰瘍性病変と
は、
「偽腔の一部の小突出所見」で、裂孔・亀裂は解離を、動脈硬化性潰瘍は
動脈硬化粥腫の存在あるいは分枝断裂等を示唆し、成因の推定に有用な所見
である。しかし、画像上は、潰瘍様突出と穿通性動脈硬化潰瘍とは所見が重
複しており、鑑別が困難な例も少なくない。
以上のように、大動脈解離の成因を含めた診断は、遺伝性・家族性か後天
性か、家族歴、発症年齢、危険因子、臨床の表現型(発症様式、CT、MRI 等の
画像所見:部位、形態等)、大動脈及び他の動脈の硬化程度から、総合的に行
う必要がある。
エ 臨床症状と自然経過
急性大動脈解離の臨床症状には、解離そのものによって生じる痛み・失神
と、解離が生じたことによって起こる続発症(合併症)がある。大半の症例
で発症時に胸部・背部に激痛を訴え、突然発症が特徴的である。一方で、急
性大動脈解離の6%程度は無痛、9~20%は典型的疼痛がなく失神をきたし
たとの報告がある。解離による続発症として、解離部の破裂による心タンポ
ナーデや縦隔あるいは胸腔(左側の頻度が高い)への致死的な大量出血、偽
腔等による分枝閉塞からの灌流障害(腕頭あるいは総頸動脈:脳梗塞、冠動
脈:心筋梗塞、上腸間膜動脈:麻痺性イレウス、腎動脈:急性腎不全、総腸
骨動脈:急性下肢動脈虚血)、大動脈弁閉鎖不全、急性心不全、凝固異常など
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日本循環器学会ら. 2020 年改訂版
大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン. 2020; 16
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