資料2 脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書 (89 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19809.html |
出典情報 | 「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を公表します(7/16)《厚生労働省》 |
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ア 概要
心停止とは、心拍出が無となり循環が停止した状態を指す。多くは、心電
図 上 、 心 静 止 、 心 室 細 動 の い ず れ か を 示 す 。 電 気 収 縮 解 離 ( electromechanical dissociation)のように QRS 波を認める場合もある。何らの前兆
なしに突然心停止を来す場合、救急蘇生が速やかに行われないと突然死に至
る。心室細動は、心電図上でどれが心室興奮か識別できない興奮波が連続し
ている状態で、心室での興奮波のリエントリー(旋回興奮)が機序となって
いる。したがって、AED を含めた早期の直流通電によって心臓全体を同時に電
気的に興奮させ、その直後に絶対不応期を作って心臓全体が興奮しない時間
帯を作成(除細動)しないと停止しない。発症から 10 分以内に直流通電する
ことが必要といわれ、時間が経過するほど除細動できない。心室細動がその
まま経過すると次第に心静止の状態となり、心筋死亡の状態になる。心静止
は全く心臓の電気的興奮が記録されない状態で、心電図上では単なる線とな
る。心室細動を経なくとも心静止になることもあり、そのような場合には直
流通電は効果なく、心臓マッサージと体液の状態を改善しなければ心筋死亡
に至る。
突然死は器質的心疾患、脳血管障害、大動脈破裂、肺梗塞などに起因する
が、最も多い原因は心疾患であり、心臓性突然死(心臓突然死)と呼称され
る。急性冠症候群のうち、虚血による心臓突然死がこれに当たる。
医学的な突然死の時間にかかわる定義は、瞬時に死に至るというもの、元
気な姿(突然死を予測できない状態)が突然死発覚前の1~2時間以内に確
認されているもの、24 時間以内とするものなど幅広い。「心臓突然死の予知と
予防法のガイドライン」においては、「急性の症状が発症した後、1 時間以内
に突然意識喪失を来たす心臓に起因する内因死」と定義されている66。我が国
において全国を網羅した突然死の疫学調査は行われていないが、諸家の研究
によると成人 1,000 人当たりの発生率は 0.27~0.35 人、全死亡に占める割合
は4~7%とされ、性別(男性)、加齢などの条件によりその頻度は上昇する。
突然死の中で心臓突然死の占める割合は 55~70%であり、我が国における年
間の心臓突然死発生数は 15,000~25,000 件程度と推定される。心臓突然死の
定義を拡大するとその頻度は増大し、心臓に起因する割合は減少する。我が
国のデータは発症から 24 時間以内の死亡と定義されることが多く、欧米で用
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日本循環器学会ら. 心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010 年改訂版).2010; 2
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