資料2 脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書 (96 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19809.html |
出典情報 | 「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を公表します(7/16)《厚生労働省》 |
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の段階であって、心不全を発症した状態には至っていないことに留意する必
要がある。
また、心不全のうち急性心不全とは、「心臓の構造的および/あるいは機能
的異常が生じることで、心ポンプ機能が低下し、心室の血液充満や心室から
末梢への血液の駆出が障害されることで、種々の症状・徴候が複合された症
候群が急性に出現あるいは悪化した病態」である81。急性心不全は、急速に心
原性ショックや心肺停止に移行する可能性のある逼迫した状態である。
イ 成因
心不全は、腔内に血液を充満させ、それを駆出するという心臓の主機能の
なんらかの障害が生じた結果出現するため、心外膜や心筋、心内膜疾患、弁
膜症、虚血性心疾患、大動脈疾患、不整脈、内分泌異常など、さまざまな要
因により引き起こされる。例えば、心房細動は、心不全患者に最も多く併発
する不整脈のひとつであり、心機能や血行動態に悪影響を及ぼし、さらに心
不全を悪化させることが知られている。
心不全の原因疾患には、心筋梗塞や心筋症のように心筋組織が直接的に障
害を受けて心不全を発症する場合、弁膜症や高血圧などにより心筋組織に長
期的に負荷が加わり機能障害から心不全を発症する場合、頻脈性ないし徐脈
性不整脈により血行動態の悪化を招く場合などがある。また、全身性の内分
泌・代謝疾患、炎症性疾患などの一表現型としての心不全、栄養障害や薬剤、
化学物質といった外的因子による心筋障害から発症する心不全など、心不全
の根本原因が心臓以外に存在する場合もある。日本におけるデータでは、入
院した心不全患者の原因疾患として多いものは順に、虚血性心疾患、高血圧、
弁膜症であった82。
心不全の予防には、高血圧治療、虚血性心疾患に対する適切な治療(ACE 阻
害薬の投与等)、肥満・糖尿病の改善、禁煙、適切な運動などが重要である。
ウ 自然経過、治療、予後
心不全の経過は多くの場合慢性・進行性である。大多数の心不全は急性心
不全として発症するが、代償化され(心臓のポンプ機能が他の機転で補われ)、
慢性心不全に移行する。その後は慢性に進行するが、急性増悪により非代償
性急性心不全を反復しやすい。急性増悪を反復することにより徐々に重症化
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日本循環器学会ら. 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017 年改訂版). 2018; 11
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日本循環器学会ら. 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017 年改訂版). 2018; 75
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日本循環器学会ら. 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017 年改訂版). 2018; 14
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