資料2 脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書 (78 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19809.html |
出典情報 | 「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書を公表します(7/16)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
高血圧は脳出血、くも膜下出血及び脳梗塞に共通の最大の危険因子であ
る。血圧値と脳卒中発症率との関係は直線的な正の相関関係にあり、血圧
が高いほど脳卒中の発症率は高くなる。したがって、高血圧治療は脳卒中
の予防にきわめて有効である42。
糖尿病は脳梗塞の確立された危険因子である。最近のメタアナリシスで
は、糖尿病は虚血性脳卒中(脳梗塞)の発症リスクを 2.27 倍高めるのみなら
ず、出血性脳卒中(脳出血やくも膜下出血)のリスクも 1.56 倍高めること
が示された。脳梗塞の発症予防には、糖尿病を含む危険因子(高血圧、脂
質異常症、肥満、喫煙)を包括的にコントロールすることが必要である43。
また、心房細動は脳梗塞の危険因子である。心房細動患者の脳梗塞発症率
は平均5%/年であり、心房細動のない人々の2~7倍高い 44。なお、各危
険因子の詳細は後記Ⅱ1(92 頁)のとおりである。
ウ
脳血管疾患の治療
脳血管疾患は、より早期(発症して数時間以内が目安)に治療を開始す
ると後遺症が軽くなることがある救急疾患である。
脳梗塞の治療においては、遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アク
チベーター(recombinant tissue plasminogen activator:rt-PA)を用い
た静注血栓溶解療法が 2005 年から、また、血管内治療による機械的血栓回
収療法が 2010 年からわが国でも認可され、治療成績が大きく向上した。ま
た、急性期脳卒中全般に関し、脳卒中集中治療室(Stroke Care Unit)ない
し脳卒中専門病棟(Stroke Unit)で治療を行うことによる死亡率及び再発
率の低下、在院期間の短縮等の有用性が示されている。
エ
疫学
かつて、脳血管疾患は日本人の死因の第1位を占めていたが、脳血管疾
患による死亡は昭和 40 年代後半から減少傾向となり、現在は悪性新生物、
心疾患、老衰に次ぐ死因の第4位となっている。しかしながら、脳卒中に
よる死亡数は、近年は横ばい傾向である45。
また、介護が必要となった原因疾患のうち、脳卒中によるものは要介護者
42
日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2019]: 2019; 25
43
日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2019]: 2019; 28
44
日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2019]: 2019; 33
45
豊田一則. 脳梗塞診療読本第 3 版. 中外医学社. 2019; 297
68