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提案書03(0399頁~0598頁)医療技術評価・再評価提案書 (24 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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②現在の診療報酬上の取扱い
・対象とする患者
・医療技術の内容
・点数や算定の留意事項

・対象とする患者

急性発症した呼吸器疾患の患者とは、肺炎、無気肺等のものをいう。

肺腫瘍、胸部外傷その他の呼吸器疾患又はその手術後の患者とは、肺腫瘍、胸部外傷、肺塞栓、肺移植手術、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に
対するLVRS(Lung volume reduction surgery)等の呼吸器疾患又はその手術後の患者をいう。

慢性の呼吸器疾患により、一定程度以上の重症の呼吸困難や日常生活能力の低下を来している患者とは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管
支喘息、気管支拡張症、間質性肺炎、塵肺、びまん性汎気管支炎(DPB)、神経筋疾患で呼吸不全を伴う患者、気管切開下の患者、人工呼吸管理
下の患者、肺結核後遺症等のものであって、次の(イ)から(ハ)までのいずれかに該当する状態であるものをいう。
(イ)息切れスケール(Medical Research Council Scale)で2以上の呼吸困難を有する状態
(ロ)慢性閉塞性肺疾患(COPD)で日本呼吸器学会の重症度分類のII以上の状態
(ハ)呼吸障害による歩行機能低下や日常生活活動度の低下により日常生活に支障を来す状態
エ 食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌等の手術前後の呼吸機能訓練を要する患者とは、食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌等の患者であって、
これらの疾患に係る手術日から概ね1週間前の患者及び手術後の患者で呼吸機能訓練を行うことで術後の経過が良好になることが医学的に期待で
きる患者のことをいう。
・医療技術の内容
呼吸器リハビリテーション料は,呼吸訓練や種々の運動療法などを組み合わせて個々の症例に応じて行った場合に算定する.
・点数や算定の留意事項
施設基準Ⅰ:常勤医師1(非常勤2),常勤理学療法士1名を含む療法士2名,175点
施設基準Ⅱ;常勤医師1(非常勤2),療法士1名,85点.
1人の従事者が1人の患者に対して重点的に個人的訓練を行う必要があると認められる場合であって,理学療法士,作業療法士又は言語聴覚士と患
者が1対1で行うものとする.


診療報酬区分(再掲)
診療報酬番号(再掲)

003

医療技術名

呼吸器リハビリテーション料

③再評価の根
拠・有効性

安定期のCOPDに対して運動療法を含む呼吸リハビリテーションプログラムは呼吸困難の改善,運動耐容能の改善,HRQOLの改善において高い確実
性を持って有効であることがPulmonary Rehabilitation, Joint ACCP/AACVPR Evidence-Based Clinical Practice Guidelines(CHEST, 2007,
British Thoracic Society guideline on pulmonary rehabilitation in adults(Thorax, 2013),An Official American Thoracic
Society/European Respiratory Society Statement: Key Concepts and Advances in Pulmonary Rehabilitation(Am J Respir Crit Care Med,
治癒率、死亡率やQOLの改善等の長期予 2013)など海外の複数のガイドラインに示されている.また増悪に関するアウトカムの改善(医療機関の受診回数の減少,入院期間の短縮な
ど),良好な対費用効果(Rochester CL, et al. An Official American Thoracic Society/European Respiratory Society Policy Statement:
後等のアウトカム
Enhancing Implementation, Use, and Delivery of Pulmonary Rehabilitation. Am J Respir Crit Care Med. 2015 Dec 1;192(11):1373-86.)
も示されている.我が国のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版においても「呼吸リハビリテーションは.COPDの呼
吸困難の軽減,運動耐容能の改善,HRQOLの改善に有効であり,COPDに対する非薬物療養の中で標準的治療と位置づけられている」とされてい
る.

ガイドライン等での位置づけ

④普及性の変化
※下記のように推定した根拠

年間対象者数の
変化

年間実施回数の
変化等

ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
る。)

令和3年6月分の社会医療診療行為別統計による呼吸器リハビリテーションの算定件数に基づく見直し前の年間症例数は施設基準Ⅰで61940×12=
743280,およそ74万例,実施件数は1166794×12=14001528 およそ1400万件.施設基準Ⅱで1243×12=14916,およそ15000例,実施件数は14373
×12=172476,およそ17万件と考えられる.
見直し後これがどこまで増加するかを推定する根拠となるデータは現在ないが,日本呼吸ケア・リハビリテーション学会が本申請に際して行った
アンケート調査では,主として診療所より「呼吸リハビリテーションを実施しているにもかかわらず現行の施設基準に適合しないため診療報酬請
求ができていない」という意見が複数寄せられていた.従って主に施設基準Ⅱにおいてある程度の実施数の増加が見込まれる.

見直し前の症例数(人)

施設基準Ⅰ

740,000,施設基準Ⅱ

15,000

見直し後の症例数(人)

施設基準Ⅰ

777,000,施設基準Ⅱ

19,500

見直し前の回数(回)

施設基準Ⅰ

14,000,000

施設基準Ⅱ

170,000

見直し後の回数(回)

施設基準Ⅰ

14,700,000

施設基準Ⅱ

221,000

⑤医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)

我が国のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版(日本呼吸器学
会COPDガイドライン第6版作成委員会編,2022年,Mindsガイドラインライブラリ掲載)に
おいて,「安定期COPDに対して,運動療法を含む呼吸リハビリテーションプログラムを行
うことを強く推奨する(エビデンスの確実性 A強い)」とされている.

日本呼吸ケア・リハビリテーション学会より「呼吸リハビリテーションに関するステートメント(2018)」「呼吸リハビリテーションマニュアル−
運動療法−第2版,2012年」および「呼吸器疾患患者のセルフマネジメント支援マニュアル,2022年」が出版されており,技術的に標準化されてい
る.すでに普及した技術であり,また特別な機器を必要としないため,多くの医療施設で実践可能であると考えられる.また呼吸ケア・リハビリ
テーション学会主導の講習会も毎年総会レベルおよび地方会レベルで行われている.

施設の要件
上記呼吸リハビリテーションマニュアルでは,一般施設,専門的医療機関それぞれの施設の特性にあわせた運動療法の内容が提案されている.逆
(標榜科、手術件数、検査や手術の体 に言えば実施内容を施設の状況に適合させれば専門施設から広く一般の医療機関まで実施可能であると考えられる.
制等)
・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)

人的配置の要件
原則として1対1で行うべきであり,理学療法士または作業療法士が常に1対1で患者に対応できることが必要である.このため常勤の理学療法士
(医師、看護師等の職種や人数、専門 または作業療法士が少なくとも1名いること,あるいはそれに準じた人員配置があることが必要要件である.
性や経験年数等)
・呼吸リハビリテーションマニュアル−運動療法−第2版
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸リハビリテーション委員会ワーキンググループ,日本呼吸器学会呼吸管理学術部会,日本リハビリ
その他
テーション医学会呼吸リハビリテーションガイドライン策定委員会,日本理学療法士協会呼吸理学療法診療ガイドライン作成委員会 編,2012年
(遵守すべきガイドライン等その他の ・呼吸器疾患患者のセルフマネジメント支援マニュアル
要件)
3学会合同セルフマネジメント支援マニュアル作成ワーキンググループ(日本呼吸ケア・リハビリテーション学会呼吸リハビリテーション委員会
ワーキンググループ,日本呼吸理学療法学会ワーキンググループ,日本呼吸器学会呼吸管理学術部会ワーキンググループ)編,2022年

⑥安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度

呼吸リハビリテーションに対する重篤な有害事象の報告は見られない.各種ガイドラインでも安全性は高いとされている.

⑦倫理性・社会的妥当性
(問題点があれば必ず記載)

問題なし

⑧点数等見直し
の場合

見直し前
見直し後

施設基準Ⅰ
施設基準Ⅰ

175点
200点

施設基準Ⅱ
施設基準Ⅱ

85点
120点

その根拠

現実に先進施設における呼吸リハビリテーション専従理学療法士の1日のリハビリテーション実施単位数は平均12単位であった.実施に際しては
経過の確認,モニター類の準備,バイタルサインの確認,実施内容のプランニングが,また実施後には実施内容振り返り,多職種カンファレンス
などが症例毎に必要であり,質の担保されたリハビリテーションの実施単位数はこのレベルが限界であると思われる.1日12単位,月に270-280単
位の実施が最大限であると考えられ,人件費,設備の維持管理(酸素供給設備,酸素飽和度計などのモニタリング機器,エルゴメータなどの維持
管理等)の費用に見合う診療報酬としては施設基準Ⅰで200点,Ⅱで120点が必須のレベルであると思われる.

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