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参考資料1-1_長時間労働医師への健康確保措置に関するマニュアル(改訂版) (148 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35532.html
出典情報 医師の働き方改革の推進に関する検討会(第18回 10/12)《厚生労働省》
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(3)編集後記
大学病院で臨床・研究・教育に長年従事してきた本マニュアル作成委員の一人から
過重労働の医師の健康を守り、脳心血管障害を含めた過労死を防ぐという対応は評価されるべ
きであり、迅速な改革が重要である。しかし、本改革にあたって、考慮するべき事項がある。
1)医療職においても、他の職種と同様に全国で一律な対応をするべきか考察が必要である
例えば、診療科毎に診療内容は多様であり、医師の年間の時間外・休日労働の上限規制の施行
前後で、対応する各科の患者が変わるわけではなく、対応すべき患者も多様である。特に、大
都市の医療と医療過疎の地域の人的資源や医療需要等状況は大いに異なり、真に必要となる労
働時間というものは各医師で異なってくるものである。
2) 科学的根拠に基づいた継続的な改革が望ましい
改革には良い部分とそうでない部分があるので、通常、このような大改革をなす場合は前もっ
て、少なくともある程度結果が科学的に検証された後に行なわれるべきであると思われるが、
今回、その過程が十分とは言い難いと感じた。また、医療面、経済面も含めた制度の検証もま
だまだ必要ではないだろうか。
3)医療技術の低下、ひいては科学立国の存続への影響への考慮が必要である
医師は臨床研修医・専攻医時代のみならず、その後も「研修」を要する時期が長く続く。この
期間、技能を身につける前段階である医師に、十分な研修を行う「時間」を確保するというC
水準が設けられてはいるものの、一義的に労働時間を規制するというメッセージが先行し、研
修意欲のある医師の意欲がそがれてしまい、医療技術の低下、ひいては科学立国の存続に影響
を与える可能性はないだろうか。制度の施行後も引き続き、今回の改革でのこれらへの影響に
ついて分析や検証を十分行う必要があるのではないか。
また、病院単位で考えた際、単独の病院では働き方改革への対応が困難な場合があると予想
され、地域の医療機関がブロック単位で働き方改革を行う体制を整えることが必要ではないだ
ろうか。患者、医療チームが関連する医療領域での改革は一律ではなく、それぞれの環境に併
せた bottom line からの改革が必要と思われ、地域医療構想や医師偏在対策と共に、医師の働
き方改革は我が国の医療政策の1パーツであると認識し、今後も一体的な施策の推進が望まれ
る。
一方、本邦の医療界は基礎、臨床共に世界的な観点からみれば、地盤沈下が問題となってい
る。科学性を維持し、世界の医療を牽引していくことも我が国の重要な役割である。私は内科
医であるが、肝臓・肺移植の黎明期に若手外科医の真摯な研鑽と一部、過酷とも思える勤務状
況の現場に身を置いた。自らその身をその場に置いた彼らの多くは、その後、我が国の移植医
療のリーダーとして全国で活躍している。このような状況は医学の多くの領域であったと思
う。過重労働の医師の健康を守ることを基本に、今回の改革では他業種から5年の猶予を持っ
た上で様々な配慮、緩和策が施されているが、多くの事を学ぶべき若い世代にとって、果たし
て良い環境を提供しているか否か、改革を行った場合のあらゆる方面での実証も同時に進行す
べきと考える。

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