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提案書09(1601頁~1801頁)医療技術評価・再評価提案書 (77 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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⑥安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度

⑦倫理性・社会的妥当性
(問題点があれば必ず記載)

⑧点数等見直し
の場合
⑨関連して減点
や削除が可能と
考えられる医療
技術(当該医療
技術を含む)

脂肪注入の腫瘍学的安全性に関して、近年、多くの報告がなされている。その手技の特異性から、大規模な前向き研究やランダム化比較研究はほ
とんどないものの、現在のところ、脂肪注入が乳癌再発率を増加させるという明らかな臨床的証拠はない。Groenらは43編の文献に関してレ
ビューを行い、乳癌術後に脂肪注入を施行した6,260例において、局所再発率と遠隔再発率はそれぞれ2.5%と2.0%であったとしている(資料
3)。Krastevらのコホート研究では、脂肪注入後5年間における局所再発率は、注入群で2.8%(8/287例)であり、対照群の3.7%(11/300例)
と比べて同等であったとしている。また、乳癌手術の種類、腫瘍の浸潤性、および病理学的ステージを含むサブグループ別比較においても、脂肪
注入は局所再発率の上昇に影響せず、遠隔転移と乳癌死亡率も上昇しなかったとしている。Stumpfらのコホート研究では、乳房部分切除術におい
て一期的に脂肪注入を行った65例と乳房部分切除術のみを行った255例では、術後5年間において局所再発率と遠隔転移率にそれぞれ差を認めな
かったとしている(それぞれ4.6% vs 3.9%;p=1.000、7.7% vs 4.7%;p=0.517)。
脂肪注入の合併症に関して、De Deckerらは23編の文献レビューを行い、2,419例のうち5.31%に脂肪壊死、8.78%に囊胞・石灰化形成、および
0.96%に感染を認めたとしている。これらは、特に乳房部分切除術後において術後画像診断の妨げとなり得る。一方、Hansonらのコホート研究で
は、乳房部分切除術後に脂肪注入を施行した群(72例)と施行しなかった群(72例)において、触知可能な腫瘤形成(9.7% vs 19.4%;p=
0.1)、脂肪壊死(34.7% vs 33.3%;p=0.86)、石灰化(37.5% vs 34.7%;p=0.73)、および乳房の生検率(15.3% vs 22.2%;p=0.23)
にそれぞれ差を認めなかったとしている。ただし、脂肪注入後の脂肪壊死などの合併症は、注入量が多いなどの手技的要因や、時間の経過によっ
て発生率が高くなるという報告もあり、患者への十分な説明と、長期にわたる術後フォローアップが必要である。ほかに重篤な合併症として考え
られるのは、殿部への脂肪注入において報告のある脂肪塞栓症であるが、これまで乳房への脂肪注入における発生例は見当たらない。顔面半側萎
縮症に対する応用では、遊離皮弁の合併症率は27.1%であり、脂肪注入の合併症率は4.2%であった(オッズ比6.7、P = 0.0003)。

これまで乳癌術後の乳房再建において日本では整容的、あるいは質的(機能的)に回復させる目的で、皮弁や植皮による再建,シリコーン乳房イ
ンプラント、乳頭形成までが保険診療が認められている状況である。移植後の生着原理についても、植皮とほぼ同様に信頼性のある術式である
が、植皮術(皮膚移植)、粘膜移植、軟骨移植、骨移植、乳頭移植、筋膜移植、複合組織移植など、血管吻合を伴わない多くの自家組織移植が古
くから保険適応になっているにもかかわらず、脂肪移植だけが2022年まで保険適応になっておらず、2022年4月より鼻咽頭閉鎖不全に対してのみ
適応されているが現状である。顔面領域への応用についても、簡便で低侵襲である本技術の保険適用がないために、難易度が高く高侵襲である遊
離皮弁移植が選択されている。乳房や顎顔面領域への脂肪注入術に関して未だ保険収載されていないことにより多少の混乱が生じている状況であ
る。

見直し前
見直し後
その根拠
区分

特になし

区分をリストから選択

番号
技術名
具体的な内容

該当なし
増(+)

プラスマイナス
⑩予想影響額

予想影響額(円)

約374,000,000円

その根拠

乳房分の980件×38,160点×10=373,968,000

備考

乳房のほとんどの症例は100cc以上で施行されると思われる。

⑪算定要件の見直し等によって、新たに使用される医薬
品、医療機器又は体外診断薬

特になし

⑫その他

特になし

⑬当該申請団体以外の関係学会、代表的研究者等

⑭参考文献1

⑭参考文献2

⑭参考文献3

⑭参考文献4

⑭参考文献5

特になし

1)名称

(※追加エビデンス)FRQ6

2)著者

日本乳癌学会編

乳房再建法としての脂肪注入は勧められるか?

3)雑誌名、年、月、号、ページ

乳癌診療ガイドライン2022年版

4)概要

乳房再建法としての脂肪注入は細心の注意のもと行ってもよい。ただし,適切な手技の習得と,長期間の術後フォローアップが必要である。

1)名称

(※追加エビデンス) Efficacy of autologous fat transfer for the correction of contour deformities in the breast: A systematic
review and meta-analysis.

2)著者

Krastev TK, Alshaikh GAH, Hommes J, Piatkowski A, van der Hulst RRWJ.

3)雑誌名、年、月、号、ページ

J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2018 Oct;71(10):1392-1409.

4)概要

89編の文献から5350名の乳房への脂肪注入患者を抽出したメタアナリシス。患者および外科医の総合的な満足度は、それぞれ94.3%と95.7%と非
常に高く、運動機能の改善を内容に含む患者主観的アウトカム評価ツールであるBreast-Qスコアの改善を示した。

1)名称

(※追加エビデンス) Effects of Prophylactic Lipofilling After Radiotherapy Compared to Non-Fat Injected Breasts: A Randomized,
Objective Study.

2)著者

Gentilucci M, Mazzocchi M, Alfano C.

3)雑誌名、年、月、号、ページ

Aesthet Surg J. 2020;40(10):NP597-NP607.

4)概要

乳癌術後の放射線照射に対する自家脂肪注入の有効性を示した無作為化比較試験の報告。自家脂肪注入群では、放射線による皮膚ダメージが減少
し、再建の結果とQOLを向上させるとした。

1)名称

(※追加エビデンス) Patient-Reported Outcomes After Autologous Fat Grafting in Prosthetic Breast Reconstruction: Prospective
Cohort Study Using a Multivariate Analysis.

2)著者

Sowa Y, Inafuku N, Tsuge I, Yamanaka H, Morimoto N.

3)雑誌名、年、月、号、ページ

Ann Plast Surg. 2023 Feb 1;90(2):123-127

4)概要

乳房再建における脂肪移植術併用の有用性について日本国内で最初の前向き観察臨床研究で、患者報告アウトカム評価を行い、通常の乳房インプ
ラント単独の乳房再建に比較して脂肪移植術を加えることで患者の満足度・QOLが有意に向上することを報告した。

1)名称

(※追加エビデンス) Soft Tissue Reconstruction in Patients With Hemifacial Microsomia: A Systematic Review of the Literature.

2)著者

Sinclair N, Gharb BB, Papay F, Rampazzo A.

治療編

342-343.

3)雑誌名、年、月、号、ページ

J Craniofac Surg. 2019;30(3):879-887

4)概要

顔面半側萎縮症に対し従来法である有茎皮弁や遊離皮弁と脂肪注入の比較を目的とした38文献を含むシステマティックレビュー。軽度から中等度
の軟部組織の変形は、数回の自家脂肪注入で修正することができる。自家脂肪注入による再建は遊離皮弁に比して有意に合併症率が低く安全で
あった。

※⑬については、1.の「主たる申請団体」および「上記以外の申請団体」以外に、提案される医療技術に関する研究、会合、論文発表等を実施している学会等の関連団体や研
究者等の名称を記載すること。

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