よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


提案書08(1402頁~1600頁)医療技術評価・再評価提案書 (163 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

④有効性・効率性
・新規性、効果等について③との比較
・長期予後等のアウトカム

研究結果

⑤ ④の根拠と
なる研究結果等

・半月板逸脱を鏡視下に脛骨に半月板をアンカーで整復・制動する鏡視下centralization法はKogaら(Koga H, et al.
Arthroscopic centralization of an extruded lateral meniscus. Arthrosc Tech2012 Dec;1(2):e209-12.)によって2012年
に報告されて以降、同術式の生体力学的な評価(Ozeki N, et al. Biomechanical analysis of the centralization
procedure for extruded lateral menisci with posterior root deficiency in a porcine model. Journal of orthopaedic
science 2020 Jan;25(1):161-6.)や変形性膝関節症の予防(Ozeki N, et al. Centralization of extruded medial meniscus
delays cartilage degeneration in rats. Journal of orthopaedic science 2017 May;22(3):542-8.)についての動物実験の
結果など基礎医学的報告がなされた。短期的ではあるが良好な臨床成績が諸家より報告され(Mochizuki Y, et al. Shortterm results and surgical technique of arthroscopic centralization as an augmentation for medial meniscus
extrusion caused by medial meniscus posterior root tear. Eur J Orthop Surg Traumatol2021 Aug;31(6):1235-41.)本
邦で徐々に広まりをみせている。近年では海外でも生体力学的な報告(Daney BT, et al. Utilization of Transtibial
Centralization Suture Best Minimizes Extrusion and Restores Tibiofemoral Contact Mechanics for Anatomic Medial
Meniscal Root Repairs in a Cadaveric Model. The American journal of sports medicine2019 Jun;47(7):1591-600.)や半
月板後根損傷治療の総説(Lee DR, et al. Current Reviews in Musculoskeletal Medicine: Current Controversies for
Treatment of Meniscus Root Tears. Curr Rev Musculoskelet Med2022 Aug;15(4):231-43.)で取り上げられれている。既存
手術である関節鏡視下半月板縫合後では半月板逸脱が増悪することが報告されている(Katagiri H, et al. The effect of a
longitudinal tear of the medial meniscus on medial meniscal extrusion in anterior cruciate ligament injury
patients. Knee2019 Dec;26(6):1292-8.)。・半月板部分切除術との比較のためのアウトカムについては短期・中期的にはX線
やMRIによる変形性膝関節症の進行の程度、長期的には人工膝関節置換術に移行する割合となる。

Krivicichら(参考文献1)は内側半月板後根損傷に対する制動術と半月板切除術の中期的(5年程度)な臨床成績と人工関節
置換術への移行率についてシステマティックレビュー・メタアナリシスで検討した。修復術を受けた患者は9.8%が人工膝関
節置換術をうけた一方で、半月板切除術を受けた患者では36%が人工膝関節全置換術に移行した。内側半月板後根損傷に対す
る制動術は変形性膝関節症の進行を抑制し、人工膝関節全置換術への移行を有意に低下させることを示した。Panら(Pan F,
et al. Surgical treatment of combined posterior root tears of the lateral meniscus and ACL tears. Med Sci
Monit2015 May 11;21:1345-9.)は前十字靭帯損傷に合併した外側半月板後根損傷に対して制動術と制動術を行わなかった群で
比較すると、制動術を行った患者群で術後の変形性膝関節症の進行が少なかったこと、機能予後が優れていることを報告して
いる。本邦からの報告ではKatagiriら(参考文献4)は脛骨近位骨切り術を施行した患者を後方視的に半月板制動術を行った
群と行わなかった群(半月板切除症例が含まれる)に分けて比較した。術後3年でX線で内側関節裂隙幅が半月板制動術を行っ
た群で有意に開大していた。半月板制動術の変形性膝関節症の抑制効果が示唆された。
3

ガイドライン等での位置づけ

⑥普及性

年間対象患者数(人)
国内年間実施回数(回)

ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
る。)

英国膝関節学会の半月板損傷ガイドライン(参考文献2)で急性期
の半月板後根損傷に対する半月板制動術(後根修復術)を
recommendationしている。 欧州スポーツ外傷・膝関節手術・関節
鏡学会の外傷性半月板損傷のマネージメントのコンセンサス(参考
文献3)では内側・外側半月板制動術(後根修復)術をGrade C(低
いレベルのエヴィデンスで支持)で推奨している。

3,000
3,000

※患者数及び実施回数の推定根拠等

日本で1年間行われる半月板手術(十字靭帯形成術、脛骨近位骨切り術などとの併用も含め)は2021年の社会医療診療行為別
統計によると関節鏡視下半月板切除術が18,816件、関節鏡視下半月板縫合術が16,188件であり約35,000件であった。日本関節
鏡・膝・スポーツ学会(JOSKAS)で評議員を対象とした年間半月板手術件数(2022年1月-12月)の調査を行った。9,265件の
症例数が集まり、日本の1年間の総半月板手術件数の3割弱程度の症例が集積された。後根縫合術が1,155件、centralization
が648件行われ、あわせて半月板制動術は1,800件行われていた。全半月板手術のうち2割が制動術で占められていた。ただ半
月板制動術は専門性が高い手術であるため実施されている施設はJOSKAS評議員が所属する施設に偏るものと考える。回答率が
4割であったことや、評議員所属施設においても実施される施設に偏りがあることを考えると年間症例数は約3,000例と推定さ
れる。

⑦医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)

・学会等における位置づけは変形性膝関節症の発症・進行抑制のために半月板温存が重要という認識が高まり欧州から“Save
the Meniscus”というスローガンが持ち込まれ、本邦でも年々浸透してきている。その中で半月板後根損傷や半月板変性など
により生じる半月板逸脱は半月板機能が喪失するため、その治療に対する関心は整形外科医の中で近年高まっている。JOSKAS
が主催する学術集会では毎年のように半月板治療に対するシンポジウムやパネルディスカッションが行われる。その中で半月
板制動術(半月板後根損傷修復、centralizatoin法)は必ず取りあがられるトピックである。半月板制動術の普及や教育のた
めに「半月板のすべて」(参考文献5)や「膝関節鏡視下手術テクニカルガイド」(宗田大, メジカルビュー社, 2023)といっ
た教科書に手術の適応やテクニック、術後のリハビリなどについて詳細が書かれている。・難易度については関節鏡視下半月
板切除術よりも難易度はあがる。特に学会などで術者の制限は設けていないが、成書を読んだうえで、手術見学を行ったり、
学会のワークショップで手技を経験者から教わってから、実際の手術を行うことが望ましい。

・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)

施設の要件
整形外科医師が常勤し(標榜科:整形外科、関節外科)、鏡視下半月板制動術に必要な機材およびスタッフが揃う施設であれ
(標榜科、手術件数、検査や手術の体制 ば手術は可能である。
等)
人員として、執刀医師、助手の医師、直接および間接介助を行う手術場看護師が必要である。各職種とも経験年数は問わない
人的配置の要件
(医師、看護師等の職種や人数、専門性 が、執刀医は膝関節鏡視下手術の技術研修を受けた医師が必須であり、第一助手についても技術研修を受けた医師が望まし
い。
や経験年数等)
その他
(遵守すべきガイドライン等その他の要 特になし
件)

⑧安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度

膝関節関節鏡視下手術に習熟している医師が在籍し、同手術に対する手術機材が充分に揃っていれば、一般の関節鏡視下の靭
帯再建術や半月板手術と同様に安全性には問題がない。

⑨倫理性・社会的妥当性
(問題点があれば必ず記載)

特になし

1564