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提案書06(0999頁~1199頁)医療技術評価・再評価提案書 (72 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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④普及性の変化
※下記のように推定した根拠

年間対象者数の
変化

年間実施回数の
変化等

現在、多施設共同研究として「家族性膵癌家系または遺伝性腫瘍症候群に対する早期膵癌発見を 目指したサーベイランス方法の確立」を実施し
ている。2019年7月から登録を開始し、約4年間で152名が登録され、その多くが現在も半年に1回のサーベイランスを継続している。家族性膵癌の
うちBRCA1/2が関連している割合が約1割程度と考えると15名程度が該当する。現時点でサーベイランスが保険診療上困難であることを考慮すると
これが現在の日本の現状に近く、研究外で診療として実施されているケースを含めたとしても現時点では年間20-30名程度がサーベイランスを受
けていると考えられる。
BRCA1/2病的バリアント保有率は日本人非がん集団においてBRCA1病的バリアント保持者が0.04%,BRCA2病的バリアント保持者が0.17%の頻度と
されている。日本の人口(1億2616万7千人)のうち、積極的にサーベイランスを希望する可能性が高い年齢を仮に50-69歳とするとその人口は
3200万人(総務省統計局人口推計データ)、その0.21%=6万7千人程度がBRCA1/2病的バリアント保持者となる。そのうち何%が第一度近親者に
膵癌の家族歴があるか、という正確なデータはないが、仮に1/4が該当するとすると17,000人程度がサーベイランスの対象となる。そのうち医師
の勧めや自分の情報収集によりサーベイランスを希望するのが約半数として8500人程度がサーベイランスを受ける推定数と算定した。

見直し前の症例数(人)

20-30人

見直し後の症例数(人)

8,500人

見直し前の回数(回)

1-2回

見直し後の回数(回)

1-2回

⑤医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)

MRIは長年日常診療で広く実施されているもののため、医療技術として成熟している。日本膵臓学会が作成した膵癌診療ガイドラインでも「膵癌
を疑った場合」に実施する検査として提案(弱く推奨)されている。

施設の要件
(標榜科、手術件数、検査や手術の体 3テスラ以上若しくは1.5テスラ以上3テスラ未満のMRI装置のいずれかを有していること。
制等)
・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)

人的配置の要件
(医師、看護師等の職種や人数、専門 3テスラ以上のMRI装置においては、画像診断管理加算2又は3に関する施設基準の届け出を行っていること。
性や経験年数等)
MRI安全管理に関する事項(日本医学放射線学会画像診断管理認証制度)
1. 導電性のある金属を含む貼付剤を使用したまま検査を行わないこと。[加熱により貼付部位に火傷を引き起こす可能性があるため]
2. 金属や電気・電子部品を含む医療機器等が植込み、又は留置された患者には、原則 MR 検査を実施しないこと。[植込み、又は留置された医療
その他
(遵守すべきガイドライン等その他の 機器等の体内での移動、故障、破損、動作不良、火傷等が起こるおそれがあるため]ただし、条件付きで MR 装置に対する適合性が認められた医
療機器の場合を除く。検査に際しては、患者に植込み又は留置されている医療機器の添付文書等を参照のうえ、撮像条件等を必ず遵守すること。
要件)
3. 金属を含む医療機器等を MR 検査室に持ち込まないこと。[MR 装置への吸着、故障、破損、火傷等が起こるおそれがあるため] ただし、条件
付きで MR 装置に対する適合性が認められた医療機器の場合を除く。検査に際しては、使用する医療機器の添付文書等を参照のうえ、適合する磁
場強度を必ず確認すること。

⑥安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度

MRI検査が禁忌な金属が存在する場合、検査不可。金属を身に着けて検査室に入らないよう指導。膵サーベイランスにおける造影剤使用は不要
であり、アレルギーなどのリスクはない。

⑦倫理性・社会的妥当性
(問題点があれば必ず記載)

近年ゲノム診療が浸透するに伴い、国民の多くも情報に敏感になっている。膵癌においてもBRCA1/2病的バリアント陽性例に対するオラパリブが
保険適応となり、BRCA1/2検査の実施率が高まっている。その状況下で、膵癌発症のリスクが高まることが判明している個人に対して、サーベイ
ランスが保険診療で実施できない場合、情報は有しておりながら手遅れ(切除不能な状態)で発見され、死亡につながる可能性がある。もしくは
自費診療でサーベイランス受ける個人のみが切除可能性が高まる、といった事態が生じうる。このような現状が改善されないことは倫理的に問題
である。ゲノム診療の浸透とともに社会的要求(妥当性)が高まっている。

⑧点数等見直し
の場合

見直し前
見直し後
その根拠

該当なし
該当なし
該当なし

区分
⑨関連して減点
や削除が可能と
考えられる医療
技術(当該医療
技術を含む)

該当なし

その他(右欄に記載。)

番号
技術名

該当なし
該当なし

具体的な内容

該当なし
増(+)

プラスマイナス
予想影響額(円)

12.3億円

その根拠

増額分:13.2億円(サーベイランスがEUS+MRIのため、両検査を用いたサーベイランスについての予想影響額を試算した)
切除例は術前化学療法(GEM+S-1)、術後化学療法(S-1半年)を受ける想定で、切除+薬剤費で330万と計算。非切除療法はmodified FOLFIRINOX
療法(体表面積1.5m2として1回65115円)を4回投与+オラパリブ600㎎(150㎎=5185.1円/錠)を7.4ヶ月内服、2次治療として50%の患者が
GEM+NabPTX療法を3ヶ月投与した(=1.5ヶ月と換算)と計算して一人526万円)。サーベイランス保険適応前は30人/年、保険適応後は8500人/年
で10年間、年1回サーベイランスを受ける計算とした。サーベイランスの普及前の切除可能患者の割合を25%、普及後を60%、いずれも再発率を
50%、サーベイランスを受けた患者のうち10年間で1.69%(Clin Gastroenterol Hepatol . 2018 Jul;16(7):1123-1130.e1.)とする。生涯にかか
る膵癌関連の医療費を切除、薬剤費、検査費のみについて試算
8500人×1.69%=約144人が膵癌を発症、普及前の切除可能患者が36人、切除不能患者が108人、普及後の切除可能患者が86人、切除不能患者が58
人となる。
普及前は約7.8億円、普及後は約21億円の医療費の試算となり、検査普及により13.2億円の増額となる。

⑩予想影響額

減額分:0.9億円
BRCA1/2の病的バリアントを有する膵癌患者のうち、8500人×1.69%=144人が膵癌が発症する。完治に至る患者数は普及前は144×25%×50%=18
人、普及後は144×60%×50%=約43人となる。つまり25人が膵癌で死亡せずに済む計算となる。BRCA1/2病的バリアント保持者で膵がんになる患者
は一般的な膵癌患者より若年で発症する傾向があり、中央値57歳程度である(N Engl J Med . 2019 Jul 25;381(4):317-327.)。適切な対象に適
切な医療的介入がなされることで膵がんになるが死亡せずに済む(完治する)患者が25人増える。このこと自体が非常に意義が大きいことにある
が、さらに働き盛りの世代の死亡が回避されることから社会保険料の支払いの増分が想定される。月あたりの健康保険料支払いを約6万円(年間
72万円)、サーベイランスの10年間のどこかで膵がんが発症したと考え、社会保険料の支払いの増加期間を平均5年間とすると、72万×5年×25人
=約0.9億円が保険料として確保される計算となる。

備考

⑪算定要件の見直し等によって、新たに使用される医薬
品、医療機器又は体外診断薬

膵癌は最も厳しい難治癌として今なお多くの国民に恐怖を与えている。その膵癌において、適切な対象に適切な医療的介入がなされることで死亡
せずに済む(完治する)患者が25人増える試算は、プライスレスな国民に対するメリット、成功体験となりうる。上記の試算通り、つまり8500人
程度がサーベイランスを受け144人が膵癌を発症、完治する患者が25人増えるとするとNumber needed to screen(NNS)が340人の計算となる。

MRI検査

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