よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


提案書10(1802頁~2002頁)医療技術評価・再評価提案書 (37 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

医療技術名

腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに限る)

治癒率、死亡率やQOLの改善等の長期
予後等のアウトカム

③再評価の根
拠・有効性

ガイドライン等での位置づけ

④普及性の変化
※下記のように推定した根拠

年間対象者数の
変化

Cochrane Libraryによるシステマシックレビュー(参考文献4)や米国のデータベースを用いた研究、ドイツでの中・高リスクの子宮体がん
419名の研究やスウェーデンにおける7,275名の I期からIII期の子宮体癌患者を対象とした集団ベースの後方視的研究によれば、再発高リス
クの子宮体癌であっても、腹腔鏡手術群と開腹手術群との間で死亡リスクや再発リスクに有意な差はなかった。また、周術期死亡、輸血を必
要とする割合、膀胱・尿管・腸・血管の損傷の割合にも有意な差はなかった。腹腔鏡手術群は開腹手術群よりも出血量が有意に少ないという
結果であった。また、米国のNational Surgical Quality Improvement Projectデータベースにおいては、鏡視下手術の普及が子宮体がん患
者の手術30日後の合併症、再入院,再手術の大幅な減少に寄与している結果であったと結論づけている。本邦においても、多施設での子宮体
がん腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術54例と開腹手術99例のケースコントロールスタディや本邦における2017年7月から2020年3月末日まで先
進医療A下で登録された子宮体がん腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術30施設403例の検討では、術中合併症発症率は4%で、血管損傷1%、尿管
損傷1.7%、腸管損傷0.5%、術後合併症は腸閉塞0.7%、リンパ嚢胞1.5%、乳び漏4.7%、創部感染0.2%、リンパ浮腫0.7%であり、いずれ
も過去に本邦報告された開腹手術より、頻度が低く、3年の無病生存率は86.5%、全生存率は97.2%と従来の開腹手術に比して低くなく、リ
ンパ節転移例のIIIC期のみの検討でも、3年無病生存率は84.4%、全生存率は94.5%と従来の開腹手術に比して有意な差はない結果であっ
た。その他、本邦での腹腔鏡下手術301例を含む909例の子宮体がんの後方視研究(参考文献5)では、IA期、IB期、II期での比較でも、3年無
病生存率は腹腔鏡手術で90.5%、開腹手術85.5%、全生存率は91.3%、92.5%と両群間に有意な差はなかった。さらに、IIIA期、IIIB期、
IIIC期、IV期での比較では、3年無病生存率は腹腔鏡手術で74.5%、開腹手術51.5% (p=0.01)、全生存率は92.3%、75.1%(p=0.03)と腹腔
鏡手術の方が予後が良い結果であった。以上から、本邦のデータや海外のデータから子宮体癌における腹腔鏡下手術はIB期以上であっても腹
腔鏡下手術は開腹手術に根治性で劣ることはないと考えられ、下記に示す本邦における子宮体がん治療ガイドライン(参考文献1)、産婦人
科内視鏡手術ガイドライン(参考文献2)やNCCNガイドライン(参考文献3)においても、子宮体癌IA期のみならず、IB期やII期、IIIC1期、
IIIC2期に対しても腹腔鏡下手術が開腹手術に並ぶ術式として推奨されている。

・日本婦人科腫瘍学会の子宮体がん治療ガイドライン2018年版では、CQ04(Page77-80)傍
大動脈リンパ節郭清(生検)の意義と適応について、①正確な手術進行期決定に必要で
ある(グレードA)とし、CQ12(Page104-107)腹腔鏡下手術の適応について、①推定I期子
宮体がんのうち再発低リスク群に対して奨める(グレードB)。②推定I・II期子宮体が
んのうち再発中・高リスク群が疑われる場合にも考慮する(推奨グレードC1)。③進行
例に対しては勧めない(推奨グレードC2)と記載されている(子宮体がん治療ガイドラ
イン2018年版、金原出版、東京、2018)。(子宮体がん治療ガイドライン2018年版、金
原出版、東京、2018)。現在2023年版を2023年7月発刊に向けて改訂中であり、①推定Ⅰ
期子宮体癌に対して推奨する。推奨の強さ1(↑↑) エビデンスレベルB②推定Ⅱ期子
宮体癌に対して提案する。推奨の強さ2(↑) エビデンスレベルC③進行例に対しては
施行しないことを提案する。 推奨の強さ2(↓) エビデンスレベルC に変更予定
で、IA期のみならず、子宮体癌IB期やII期に対しても内視鏡手術(腹腔鏡手術、ロボッ
ト手術)を推奨することになる。
・日本婦人科腫瘍学会のガイドライン2018年版 では、CQ12(Page104-107)腹腔鏡下手術
の適応について、①推定I期子宮体がんのうち再発低リスク群に対して奨める(グレード
ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載 B)。②推定I・II期子宮体がんのうち再発中・高リスク群が疑われる場合にも考慮する
する。)
(推奨グレードC1)。③進行例に対しては勧めない(推奨グレードC2)と記載されてい
る(子宮体がん治療ガイドライン2018年版、金原出版、東京、2018)。
・産婦人科内視鏡手術ガイドライン2019年版では、CQ24(page 134-136)では、再発
中・高リスクと推定されるI・II期子宮体がんに対して、腹腔鏡手術は推奨されるか?に
ついて、傍大動脈リンパ節郭清を含めた子宮体がん根治手術において、腹腔鏡手術は開
腹手術とならぶ選択肢として推奨する(推奨度2、エビデンスレベルB、合意率100%)と
示されている(産婦人科内視鏡手術ガイドライン2019年版、金原出版、東京、2019)。
現在、2024年発刊に向けて改訂中で、推奨することは変化ないと思われる。
・米国のNCCNガイドラインでは、病変が子宮に限局される子宮体がん(IA, IB期、II
期、IIIC1、IIIC2期)では低侵襲手術(腹腔鏡手術、ロボット手術)が標準手術である
と記載されている。傍大動脈リンパ節郭清術は術後治療の決定のためにも重要な術式で
あり続けることが言及されている。(NCCN guideline 2023)。

日本産科婦人科学会婦人科腫瘍登録2020年患者年報によると、子宮体がん総数13,113例のうち、本治療法の対象となる子宮体がんIA期、IB
期、II期、IIIC1期、IIIC2期は11,503例であった。そのうち、手術を選択された症例数は11,206例である。そのうち傍大動脈リンパ節郭清術
を行うべき症例は7,500例と推定され、保険収載されると、さらに内視鏡手術(腹腔鏡手術、ロボット手術)へ移行すると考えられ、そのう
ち腹腔鏡下手術を施行する症例は1,000例が転換される可能性がある。

見直し前の症例数(人)

7,500

見直し後の症例数(人)

7,500

見直し前の回数(回)

300

見直し後の回数(回)

1,000

年間実施回数の
変化等

⑤医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)

・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)

現在全国には一定の技術を有した総勢1,000人(2022年現在)の日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医がおり、自ら安全な腹腔鏡手術を執
刀する傍ら後進の育成にも邁進しており、婦人科疾患において腹腔鏡手術は標準治療の地位を確立している。一方、子宮体がんにおいては、
腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術が平成26年に保険収載されたことにより、普及が進み、2020年には年間4,000例の腹腔鏡下手術が実施されてい
る。また、2017年から先進医療Aにおいて再発中・高リスク子宮体がんに対する腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術を含む子宮体がん根治術に
おいて、3年間に30施設403例の実施登録がされ、手術時出血量は開腹手術と比較して有意に少なく、周術期合併症は血管損傷、腸閉塞、創部
感染、リンパ浮腫においていずれも有意に頻度が低く、尿管損傷、腸管損傷なども有意差はない結果であった。本邦においても多くの施設で
安全に導入され、本術式の普及は着実に進んでいると判断される。

術中合併症として腸管、膀胱・尿管、血管損傷などがおこり得るため、婦人科以外に外科・泌尿器科・麻酔科を標榜している施設が望まし
施設の要件
(標榜科、手術件数、検査や手術の体 い。術後の状態が不安定なことがあり緊急再手術を必要とする場合もあるので、臨床検査、緊急手術が24時間体制で可能であることが必要で
ある。
制等)
適切な術前術後の管理の必要性から複数の日本産科婦人科学会専門医が常勤しておりうち1名は8年以上の産婦人科臨床経験を有することが必
人的配置の要件
(医師、看護師等の職種や人数、専門 要(日本産科婦人科学会の専攻医指導施設の要件に同じ)である。手術には婦人科内視鏡手術に熟達した医師1名と婦人科悪性腫瘍の手術に
熟達した医師1名が同時に参加することが望ましい。
性や経験年数等)
その他
(遵守すべきガイドライン等その他の 子宮体がん治療ガイドライン(日本婦人科腫瘍学会編)、産婦人科内視鏡治療ガイドライン(日本産科婦人科内視鏡学会編)を遵守する。
要件)

⑥安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度

Cochrane Libraryによるシステマシックレビューによれば、子宮に主病変が限局される子宮体がん(IA期, IB期、II期、IIIC1、IIIC2期)
の研究では、腹腔鏡手術群と開腹手術群との間で死亡リスクに有意な差はなく(HR 1.04、95%CI 0.86~1.25)、再発リスクに有意な差はな
かった(HR 1.14、95%CI 0.90~1.43)。また、周術期死亡、輸血を必要とする女性、膀胱・尿管・腸・血管の損傷の割合にも有意な差はな
かった。腹腔鏡手術群は開腹手術群よりも出血量が有意に少ないという結果であった(MD -106.82 mL、95%CI -141.59~-72.06)(参考文
献4)。本邦における2017年7月から2020年3月末日まで先進医療A下で登録された30施設403例の検討では、進行期では1A期41.4%、IB期
29%,II期7.6%、Ⅲ期21.8% であった。出血量は110 mL、摘出リンパ節数は傍大動脈リンパ節領域28 (3-110)個、骨盤リンパ節領域32 (9111)個と従来の開腹手術と同等の摘出ができていた。術中合併症発症率は4%で、血管損傷1%、尿管損傷1.7%、腸管損傷0.5%、術後合併症
は腸閉塞0.7%、リンパ嚢胞1.5%、乳び漏4.7%、創部感染0.2%、リンパ浮腫0.7%であり、いずれも過去に本邦報告された開腹手術におけ
る合併症と比較では、血管損傷、腸閉塞、創部感染、リンパ浮腫においていずれも有意に頻度が低く、その他に有意差はなかった。術後在院
日数7日であった。

1838