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提案書11(2003頁~2199頁)医療技術評価・再評価提案書 (32 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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アカラシアの標準治療であるPOEM、腹腔鏡手術、バルーン拡張術の保険点数はそれぞれ、POEM(12,470点)、腹腔鏡手術(44,500点)、バルーン
拡張術(12,480点)であり、POEMが最も低いものとなっている。技術的な難易度や治療の効果から考えると、POEMの保険点数は、腹腔鏡手術の保
険点数(44,500点)と同等であることが望ましい。しかしながら、現在は、POEMと腹腔鏡手術の保険点数に、大きな差があるため、今回の提案で
は、POEMを行う上での施設基準となっている早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術の保険点数(22,100点)と同額に設定して頂くことを要望する。
【POEMと腹腔鏡手術との比較】
POEMが開発されて、10年以上が経過するが、複数の単施設からの報告ではもとより、日本の多施設前向き共同研究でも高い治療効果が示された
(参考文献2)。また海外で行われた多施設共同前向き研究では、POEMと腹腔鏡手術の治療成績が同等であることが示された(参考文献4)。
②現在の診療報酬上の取扱い
・対象とする患者
・医療技術の内容
・点数や算定の留意事項

【POEMとバルーン拡張術の比較】
一般的にPOEMや腹腔鏡手術は1回の治療でその効果を生涯維持できるが、バルーン拡張術は複数回の治療(3ヶ月から半年に1回)を要する。しか
しながら、POEMの保険点数は、反復されるバルーン拡張術よりも低いのが現状である。POEMの保険点数がこれだけ低いと、POEMを回避し、バルー
ン拡張を繰り返すことで収益を上げる医療機関が出てくる可能性が懸念される。このような事態は、臨床的な観点からも、医療経済的な観点から
も健全な状態とは言えない。また現在、POEMがバルーン拡張術以下の保険点数になっていることは、臨床の内容や成果に即しておらず、各施設に
おいて、健全な医療経営を維持して行く上で支障があるものとなっている。
【POEMと食道ESDの比較】
POEM を保険診療で行う際の施設基準の一つとして、『内視鏡的食道粘膜切開術(早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術に限る)について20例 以上の経験
を有する常勤の医師が1名以上配置されていること』とある。このPOEMを行う上で基礎的な技術と位置づけられている 早期悪性腫瘍粘膜下層剥離
術の保険点数が22,100点である。ESDの基礎技術を修得したうえで、さらに高度な技術を必要とするPOEMは、使用する器材においても、ESDに較べ
て5本以上のクリップが追加使用されるにもかかわらず、ESDの保険点数の半分であるのが現状である。したがって少なくとも食道のESDと同等以
上の保険点数をつけていただくことが妥当と考えられる。



診療報酬区分(再掲)
診療報酬番号(再掲)

K530-3

医療技術名

内視鏡下筋層切開術
国内の多施設共同前向き研究によると、術後1年目の奏効率は97%、死亡率は0%とされている(参考文献2)。また海外で行われた多施設共同前
治癒率、死亡率やQOLの改善等の長期予 向き研究では、POEMとHeller-Dor手術の術後2年間の治療成績は同等であることが示された(参考文献4)。一方で術後の逆流性食道炎の頻度
後等のアウトカム
は、Heller-Dor手術よりPOEMの方がやや多いという報告が多いが、いずれも酸分泌抑制薬の内服で臨床的な対応が可能であったとされている。

③再評価の根
拠・有効性
ガイドライン等での位置づけ

④普及性の変化
※下記のように推定した根拠

年間対象者数の
変化

年間実施回数の
変化等

2018年に日本消化器内視鏡学会より公開されたPOEM診療ガイドライン第1版(参考文献5)
のステートメントでは、『食道アカラシアに対する POEM の短期治療成績(2年)は、シカ
ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
ゴ分類 type Ⅰ、type Ⅱの食道アカラシアでは、バルーン拡張術(40歳以上)および腹腔
る。)
鏡下手術と同等であるが、type Ⅲの食道アカラシアについては、バルーン拡張術および腹
腔鏡下手術に比べ良好である』とされている。

再評価によって対象患者数や実施回数が変化するものではない。年間対象患者については社会医療診療行為別統計、日本内視鏡外科学会アンケー
ト調査、Japan Achalasia Multicenter (JAM) study Groupの調査による。

見直し前の症例数(人)

630人

見直し後の症例数(人)

630人

見直し前の回数(回)

630人

見直し後の回数(回)

630人

⑤医療技術の成熟度
・学会等における位置づけ
・難易度(専門性等)

2018年に公開されたPOEM診療ガイドライン第1版(日本消化器内視鏡学会)のステートメントでは、『POEM のトレーニングには,エキスパートの
POEM の見学、ドライラボ,ex vivo モデル、もしくは生体動物でのトレーニングを経て、最初の数例はエキスパートの監視のもと POEM を行う
ことが提案される』とされている。また平成 28 年3月4日保医発 0304 第2号 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いにつ
いて」では,以下の施設基準が義務付けられている。

◆消化器内科または消化器外科及び麻酔科を標榜している病院であること。
◆当該医療機関において、当該手術が10例以上実施されていること。
施設の要件
◆実施診療科において、常勤の医師が3名以上配置されていること。ただし、消化器外科において、医師が1名以上配置されていること。
(標榜科、手術件数、検査や手術の体 ◆常勤の麻酔科標榜医が配置されていること。
制等)
◆緊急手術体制が整備されていること。
・施設基準
(技術の専門性
等を踏まえ、必
要と考えられる
要件を、項目毎
に記載するこ
と)

◆消化器外科または消化器内科について5年以上の経験を有し、内視鏡的食道粘膜切開術(早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術に限る)について 20 例
人的配置の要件
(医師、看護師等の職種や人数、専門 以上の経験を有する常勤の医師が1名以上配置されていること。また、当該医師は、当該手術について術者としてまたは補助を行う医師として15
例(このうち5例は術者として実施しているものに限る)以上の経験を有していること。
性や経験年数等)

その他
POEM診療ガイドライン第1版(日本消化器内視鏡学会)では、前述の「平成28年3月4日保医発 0304 第2号 特掲診
(遵守すべきガイドライン等その他の 療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」を踏襲する形で、施設や術者の要件を述べている。
要件)

⑥安全性
・副作用等のリスクの内容と頻度

国内で行われた前向き、後ろ向き多施設共同研究において、有効性や安全性に問題を認めなかった。2016年4月に保険収載された後も問題を認め
ていない。前述のPOEM後の胃食道逆流症(GERD)については、国内多施設前向き研究によると、その頻度はびらん性食道炎54.2%(重症なものは
5.6%)、症候性GERD14.7%であったが、すべての症例において、酸分泌抑制薬の内服で対応が可能であった。

⑦倫理性・社会的妥当性
(問題点があれば必ず記載)

問題なし

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