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提案書01(0001頁~0202頁)医療技術評価・再評価提案書 (32 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》
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【評価項目】
【検査1回当たりの機器・材料費】
ナイオックスVEROとNObreathは参考文献1の英国NHSの医療技術評価(Harnan et al. 2015)の評価対象となり、日本で購入可能な呼気NO測定装置
である。ナイオックスVEROの本体は定価44万円で使用可能期間5年、300回測定可能なテストキットは定価56万円である。製造販売業者の見地によ
れば、定価の約2割引きで販売されていると予想されている。また本邦で、呼気NO測定を実施している2,076施設において、2021年の平均検査件数
が約400回であるが、6割以上の施設は300回以下の施設である。そこで本体1台あたりの検査コストは(44万円×0.8÷5年間÷300回)=235円/回と
算出される。またテストキットは(56万円×0.8÷300回)=1,494円と算出され、検査1回にかかる費用(測定器の償却+テストキット1回当た
り)の合計は年300回の場合で1,729円と算出され、現在の診療報酬点数(100点)では原価割れとなっている。

①再評価すべき具体的な内容
(根拠や有効性等について記載)

【検査1回あたりの人件費】
外保連試案2022では呼気ガス分析の技術度区分はBであり、検査技師の1時間当たり人件費は2,740円とされる。呼気NO測定は、喘息予防・管理ガ
イドラインに「簡便かつ非侵襲的に測定が可能で迅速性と再現性に優れている」と示されており、通常10分程度で測定が可能である。従事した検
査技師の10分間の人件費は457円であり、機器・材料費と人件費を合わせた検査費用は2,186円と試算され、実際の臨床現場で採算割れが生じてい
る。
【臨床的に期待される効果・費用対効果】
参考文献1、2、3の各システマティックレビューにおいて、従来からの症状や呼吸機能検査に基づいた治療に比べて、呼気NO測定を加えた喘息治
療は、増悪の頻度を有意に抑制するという結果で成人と小児のエビデンスは一貫している。
また、参考文献1のマルコフモデルを用いた費用対効果分析として:1) 喘息診断に資する検査法の中で、呼気NO測定と気道可逆性検査の併用によ
る診断はメサコリン負荷試験に次いで費用対効果に優れ、 2) 小児ではガイドライン治療に呼気NO測定を加えて抗炎症治療の調節を加えた場合、
QALY(質調整生存年)の増分は0.0506年、コストの増分は£2,288.53、ICER(増分費用対効果)は£45,213/QALY、3) 成人ではガイドライン治療
に呼気NO測定を加えて抗炎症治療を調節した場合、QALYの増分は0.0379年、コストの増分は£81.31、ICERは£2,146/QALY、4) 呼気NO測定は喘息
の診断および管理の両方において有用性が確認されている(Harnan et al. 2015)。QALYのみならず生産性損失等も加味した参考文献4のHonkoop
et al. 2015によるRCTにおいて、呼気NO測定で気道炎症をモニタリングしながら治療調節した場合、症状からコントロールした喘息管理を行う場
合に比べ費用対効果に優れる、としている。
上記より、検査料が低く機器・材料費と人件費を含めた実際の検査費用が採算割れとなっており、100点→220点への増点を提案する。

【対象とする患者】
呼気に含まれる炎症由来の一酸化窒素(NO)濃度を測定することで、喘息患者及び喘息とCOPDのオーバーラップ患者の診断及び管理に使用する。
主には、1) 臨床症状や呼吸機能検査から喘息が疑われるがその確定診断が困難な患者、2) 喘息発作の予防や管理のため医療機関での定期的な治
療を必要とする患者、などである。
②現在の診療報酬上の取扱い
・対象とする患者
・医療技術の内容
・点数や算定の留意事項

【技術内容】
侵襲性のない呼気の一酸化窒素(NO)濃度を測定するために、流量を一定に保ちつつ、かつ鼻腔の一酸化窒素を混入させずに呼気NO濃度を短時間
で計測する技術イノベーションにより、従来の呼吸機能検査や喀痰細胞検査では困難であった気道炎症の評価を非侵襲的かつ容易に行うことがで
きる。喘息の補助診断のみならず、モニタリングおよび抗炎症治療の調節に用いることで、増悪の予防に役立つ医療技術である。
【点数や算定の留意事項】
呼気ガス分析には、呼気CO検査や酸素摂取量測定および二酸化炭素排出量測定等も対象に含まれるため、呼気NO測定の場合と、その他の場合に分
け、その他の場合は100点に据え置くことで、増点による他検査への影響はないと考えられる。



診療報酬区分(再掲)
診療報酬番号(再掲)

200 4

医療技術名

スパイログラフィー等検査

呼気ガス分析

【診断の向上による増悪の減少およびQOLの改善】
参考文献1の英国NHS(Harnan et al. 2015)による費用対効果のモデリングにおいては、従来の指標である症状や呼吸機能検査で喘息の診断を確
定できなかったケースにおいては、1人当たり年間1.02回の増悪が追加的に発生し(Jarayam et al. 2006の結果を援用)、その期間における効用
値の損失(EQ-5Dの尺度によるdisutility)を0.05と見積もり(Sullivan et al. 2011の結果を援用)、呼気NO測定を併用し正しい診断が下され
ることによりこれらが回避されることを織り込んでいる。
【管理効率の向上による増悪の減少】
1)参考文献2の Petsky et al. 2016aによるシステマティックレビューにおいては、成人喘息患者について、5つのRCTを基にしたメタアナリシス
治癒率、死亡率やQOLの改善等の長期予 の結果として、コントロール群に比べ、呼気NO測定を用いた管理において増悪発生のオッズ比は0.60(95%信頼区間:0.43-0.84)としている。
2) 参考文献3のPetsky et al. 2016bによるシステマティックレビューにおいては、小児喘息患者について、8つのRCTを基にしたメタアナリシス
後等のアウトカム
の結果として、コントロール群に比べ、呼気NO測定を用いた管理において増悪発生のオッズ比は0.58(95%信頼区間:0.45-0.75)としている。
3)参考文献1の Harnan et al. 2015による費用対効果のモデリングにおいては、従来の喘息管理における増悪の発生率が成人0.42回/人・年、小
児0.47回/人・年である一方、呼気NO測定を用いた管理における増悪の発生率を成人0.33回/人・年、小児0.36回/人・年としており、それぞれ約2
割の発生率減少を織り込んでいる(成人のエビデンスはShaw et al. 2007、小児はSzefler et al. 2008の結果を援用)。
【管理の向上によるQOLの改善】
参考文献1において、喘息の増悪に伴う健康関連QOL(HRQoL)の効用値の損失について、Lloyd et al. 2007の結果を援用し、入院例において0.56、
入院に至らなかった例において0.32としており、増悪が回避される場合での効用値の損失の減少(=QOL改善)を織り込んでいる。

【日本呼吸器学会:2023年「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」(参考文献5)】
慢性気道疾患の治療に直結するタイプ2炎症の評価について、プライマリケア医が簡便に使
用できる臨床指針を提供している。呼気NO濃度などのタイプ2炎症バイオマーカーを用いる
ことで、病態や炎症表現型を正確に把握でき、診断精度の向上、より安全で効果的な治療
選択、増悪や呼吸機能の経年低下などの将来のリスクを抑制すること、が可能となり、重
症患者では、タイプ2炎症バイオマーカーはIL-4、IL-5、IL-13やIgEを標的にした生物学
的製剤の効果が期待される症例の選択や治療方針の決定に不可欠な検査であると提言して
いる。

③再評価の根
拠・有効性

【日本アレルギー学会監修「喘息予防・管理ガイドライン2021」】(添付文書1/3)
喘息の管理目標として気道炎症を制御することが第一目標に掲げられ、可能な限り呼気NO
測定や喀痰好酸球検査で気道炎症を評価すると記されている。
ガイドライン等での位置づけ

【日本呼吸器学会:2018年「呼気一酸化窒素(NO)測定ハンドブック」】(添付文書1/
ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
3)
る。)
専門医から非専門医までが喘息の気道炎症評価に利用できるよう、日本での基準値、測定
値の解釈、測定原理などを解説し普及に努めている。(Minds診療ガイドライン作成の手引
き2007準拠)
【英国NICE喘息診断ガイドライン:2017年「Asthma: diagnosis, monitoring and chronic
asthma management / NICE guideline」(添付文書3/3)】
喘息の診断管理において、呼気NO測定を追加すべき必須の臨床検査として推奨を通知
【米国胸部学会:2011年「An Official ATS Clinical Practice
Guideline:Interpretation of Exhaled Nitric Oxide Levels (FENO)for Clinical
Applications」】
呼気NOの測定が以下の4点で有用としている: 1)気道における好酸球性炎症の検知、2)吸
入ステロイド薬の有効性の予測、3)吸入ステロイド薬の調節のための気道における好酸球
性炎症のモニタリング、4)吸入ステロイド薬の服薬アドヒアランスの評価

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