提案書02(0203頁~0398頁)医療技術評価・再評価提案書 (177 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000190899_00011.html |
出典情報 | 中央社会保険医療協議会 診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(令和5年度第1回 11/20)《厚生労働省》 |
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①再評価すべき具体的な内容
(根拠や有効性等について記載)
・特発性肺線維症(IPF)は指定難病であり、中でもIPF急性増悪は、日本呼吸器学会「特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き」によると初回急
性増悪での生存率は約20%とされており、予後は極めて不良であるが、現在、IPFおよび特発性間質性肺炎の急性増悪を効能・効果とする医薬品・
医療機器はなく、効果的な治療法は確立していない。
・近年、IPFの急性増悪病態に対して、エンドトキシン除去向け吸着型血液浄化用浄化器として開発されたポリミキシンB固定化繊維カラムである
トレミキシンを用いた血液浄化療法(PMX療法)の有効性が報告されており、2008年からは、厚生労働省難治性疾患克服研究事業「びまん性肺疾
患に関する調査研究班」において、IPF急性増悪に関するPMX療法の臨床効果について全国多施設共同による後ろ向き研究が行われた。この研究で
はIPFを含む進行性間質性肺炎の急性増悪が対象とされ、全国18施設の全160症例(うちIPF 73症例)について検討が行われたが、全症例・IPF群
ともにPMX療法施行により有意な酸素化(P/F比)の改善、末梢白血球数の有意な低下を認めた。またIPF群の急性増悪後の予後については、1ヵ月
生存率は70.1%、3ヵ月生存率は34.5%であり、これまでの報告と比較してPMX-DHPによる予後の改善が期待される結果となった。
・それらの結果をを踏まえ、2014年~2018年にIPF急性増悪患者を対象として先進医療Bによる臨床研究『特発性肺線維症の急性増悪病態に対する
トレミキシンを用いた血液浄化療法(PMX療法)の有効性及び安全性に関する探索的試験』(前向き単群試験)が実施され、20例の患者にPMX療法
が施行された。主要評価項目であるKaplan-Meier法により推定したPMX療法開始後4週間時点の生存率及び95%CIは65.0%(40.3%,81.5%)であり、
95%CIの下限は外部参照値(既存の治療法の生存率上限である40%)を上回った。さらに、肺酸素化能、胸部画像所見、炎症性マーカーの有意な改
善も確認された。当該結果は前述の「厚生労働省びまん性肺疾患に関する調査研究班」による全国規模での後ろ向き検討と同様の良好な結果であ
り、前向き研究によって改めてPMX療法の有効性が示された。
・また既にIPF急性増悪に対するPMX療法については多くの臨床研究がなされており、本治療法介入群と非介入群を比較した後ろ向きコホート研究
において、有意に生存率が改善することが多数報告されている。
・「特発性間質性肺炎診断と治療の手引き 改訂第4版」、「特発性肺線維症の治療ガイドライン2023」にも治療法のひとつとして掲載されてい
る。
・以上のことからトレミキシンを特発性肺線維症の急性増悪に臨床使用することで難治性疾患に対する治療の一助になると考え、製造販売企業が
進めている薬事承認、保険適用と伴い、技術料についても診療報酬が算定可能となるよう再評価が必須である。
②現在の診療報酬上の取扱い
・対象とする患者
・医療技術の内容
・点数や算定の留意事項
・対象とする患者:グラム陰性菌による敗血症性ショックの患者(算定の留意事項にて定義)
・技術内容:吸着式血液浄化法
・点数や算定の留意事項:2,000点、算定の留意事項は以下の通り。
(1)エンドトキシン選択除去用吸着式血液浄化法において、18 歳以上の患者にあっては、次のいずれにも該当する患者に対して行った場合
に、区分番号「J041」吸着式血液浄化法により算定する。
ア エンドトキシン血症が強く疑われる状態であり、次のいずれかの項目に該当するもの。
なお、診療報酬明細書の摘要欄に①から③までのいずれかの要件を満たす医学的根拠について記載すること。
① 細菌感染症を疑ってから当該治療が終了するまでに、エンドトキシン選択除去用吸着式血液浄化法の開始前までに行った区分番号「D01
8」細菌培養同定検査の「3」血液又は穿刺液血液(血液に限る。)において、グラム陰性桿菌の陽性が確認されている場合。
② 細菌感染症を疑ってから当該治療が終了するまでに、他の保険医療機関においてグラム陰性桿菌の感染が疑われ抗菌薬投与が行われていたこ
とが証明されている患者であって、当該医療機関において初回に実施した区分番号「D018」細菌培養同定検査の「3」血液又は穿刺液血液
(血液に限る。)が陰性である場合。
③ 細菌感染症を疑ってから当該治療が終了するまでに、当該医療機関において初回に実施した区分番号「D018」細菌培養同定検査の「3」
血液又は穿刺液血液(血液に限る。)が陰性であるものの、グラム陰性桿菌による敗血症性ショックであることが区分番号「D018」細菌培養
同定検査の「3」血液又は穿刺液血液(血液に限る。)以外の細菌培養同定検査において強く疑われ、日本救急医学会急性期DIC 診断基準が4点
以上の場合又はこれに準ずる場合。
イ 次のいずれも満たすもの。
なお、診療報酬明細書の摘要欄に①及び②の要件を満たす医学的根拠について記載すること。
① 「日本版敗血症診療ガイドライン2016」に基づき、quick SOFA で2項目以上の項目を満たし、敗血症を疑った時から臓器障害評価を行った間
で、総SOFAスコアの2点以上の上昇を認めること。
② 適切な輸液負荷にもかかわらず、平均血圧 ≧ 65 mmHg を維持するために循環作動薬を必要とし、かつ血清乳酸値 > 2 mmol/L(18 mg/dL)
を認めること。
(2)エンドトキシン選択除去用吸着式血液浄化法において、18 歳未満の患者にあっては、エンドトキシン血症であるもの又はグラム陰性菌感
染症が疑われるものであって、細菌感染症を疑ってから当該治療が終了するまでの期間におけるエンドトキシン選択除去用吸着式血液浄化法の開
始前の時点で、「日本版敗血症診療ガイドライン2016」における小児SIRS診断基準をみたすこと。
J
診療報酬区分(再掲)
診療報酬番号(再掲)
J041
医療技術名
吸着式血液浄化法(1日につき)
③再評価の根
拠・有効性
(1)先進医療B結果(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 びまん性肺疾患に関する調査研究 2021年度 総括・分担研究報告
書)
先進医療BにてIPF急性増悪患者に対するPMX療法の有効性、安全性について検討した。主要評価項目であるKaplan-Meier法により推定したPMX療法
開始後4週間時点の生存率及び95%CIは65.0%(40.3%,81.5%)であり、95%CIの下限は外部参照値(既存の治療法の生存率上限である40%)を上
回った。さらに、PMX療法施行により肺酸素化能、胸部画像所見等の有意な改善も確認され、有効性が示唆された。安全性についても、臨床使用
上、特段の問題はないと判断するとの結論を得た。
治癒率、死亡率やQOLの改善等の長期予 (2)厚生労働省びまん性肺疾患に関する調査研究班による全国規模での後ろ向き検討(Abe S., et al. Intern Med. 2012;51(12):1487-91)
IPFを含む進行性間質性肺炎の急性増悪が対象とされ、全国18施設の全160症例(うちIPF 73症例)について検討が行われた。全症例・IPF群とも
後等のアウトカム
にPMX療法施行により有意な酸素化(P/F比)の改善、末梢白血球数の有意な低下を認めた。またIPF群の急性増悪後の予後については、1ヵ月生存
率は70.1%、3ヵ月生存率は34.5%であり、これまでの報告と比較してPMX療法による予後の改善が期待される結果であった。
(3)PMX療法介入群と非介入群を比較した後ろ向きコホート研究(Enomoto N., et al. BMC Pulm Med. 2015;15:15.、 Oishi K., et al. Intern
Med. 2016; 55(24): 3551–9.)
12ヶ月生存率について、それぞれの研究で48.2% vs 5.9%(log-rank test、p=0.041)、41.7% vs 9.8%(log-rank test、p=0.040)と、PMX療法
施行群は非施行群と比較し有意に生存率が改善することが報告されている。
ガイドライン等での位置づけ
特発性肺線維症の治療ガイドライン2023 P37-38
CQ13 IPF急性増悪患者にPMX-DHP療法は推奨されるか?
「IPF急性増悪患者に対してPMX-DHP療法を行わないことを提案するが、一部の患者にはこ
ガイドライン等での記載あり(右欄に詳細を記載す
の治療法が合理的な選択肢である可能性がある。」(推奨の強さ2、エビデンスの質C)
る。)
本ガイドラインは「Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020」とGRADEシステムを参考
にして作成された。「GRADEシステムを使用したことを明記するための基準を提案(201604更新 https://www.gradeworkinggroup.org)」に照らした自己評価が示されている。
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