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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (100 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q3

高齢がん患者の化学療法・放射線療法中あるいは後のリハビリテーション治療における留
意事項は何か?

A3

フレイルな高齢がん患者では、有害事象の発症率が高く、生命予後にも悪影響が出るため、
治療開始前に高齢者機能評価を行い、積極的なリハビリテーション治療を行う。

【 解説 】
化学療法や放射線療法を受ける高齢がん患者では、老年症候群により「フレイル」に陥っている
可能性が高いとともに、複数の併存疾患に伴う多剤併用や加齢による薬物の代謝および排泄機能の
低下などにより有害事象発症のリスクが増大する。そのため、高齢がん患者に化学療法や放射線療
法を行う場合には、治療効果や有害事象などのメリットとリスク、全身状態や生命予後を考慮しな
がら治療方針を慎重に検討する必要がある。
治療前から存在する「フレイル」が化学療法・放射線療法の完遂率の低下、治療関連毒性の増大と
関連があると報告されており、高齢がん患者の治療に及ぼす「フレイル」の悪影響が明らかにされ
ている。Caillet らは、治療計画を一旦立案した高齢がん患者に対して、高齢者機能評価(Geriatric
Assessment; GA)により「フレイル」の評価を実施したところ、20.8%の患者で治療方針の変更が
必要になったことを示した 1)。また、Hurria らは手段的日常生活活動(instrumental ADL: IADL)
や治療前の歩行能力の低下、社会活動の制限、すなわち、「フレイル」が化学療法を受ける 65 歳以
上の高齢がん患者の治療関連毒性出現の予測因子であると報告している

2)。アメリカ臨床腫瘍学会

(American Society of Clinical Oncology: ASCO)によるガイドラインにおいても、化学療法を受
ける 65 歳以上の高齢がん患者では、治療前に GA を用いて身体機能、併存疾患、転倒歴、抑うつ、
認知機能、栄養状態を評価することが推奨されており、また、化学療法毒性の予測のために Geriatric
8(G8)や Vulnerable Elders Survey-13(VES-13)を用いることが推奨されている 3)。
一方、Sprod らは、化学療法・放射線療法中に運動を実施した 65 歳以上の高齢がん患者では、実
施していない群と比べ、治療中の息切れや自覚的健康観が良好であり、また、運動を実施した 80 歳
以上の高齢がん患者では、実施していない群と比べ、記銘力が維持でき、自覚的健康観が良好であ
ったと報告している 4)。
したがって、化学療法や放射線療法を受ける高齢がん患者においては、「フレイル」による
Performance Status(PS)の低下が、有害事象の増加や治療の完遂率の低下につながり、生命予後
などの転機にも影響を与えるため、治療前より「フレイル」の評価を行うとともに、評価結果に基づ
いた積極的なリハビリテーション治療を行うことが重要である。

文献
1)

Caillet P et al. Comprehensive geriatric assessment in the decision-making process in
elderly patients with cancer: ELCAPA study. J Clin Oncol. 2011;29: 3636-3642

2)

Hurria A et al. Predicting chemotherapy toxicity in older adults with cancer: a prospective
multicenter study. J Clin Oncol. 2011;29:3457-3465
92