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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (141 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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第 5 章 放射線治療総論

放射線療法は、手術と同様に局所療法であり、効果、有害事象は原則的に照射した局所に現れる。
現代の放射線療法は一般的に侵襲性が低く、手術や化学療法が難しい症例であっても施行可能なこ
とがほとんどである。高齢者がん医療の教科書でも、手術や化学療法についての注意喚起の記載は
あるが、放射線療法については、リスクが少ないとされ、むしろ手術や化学療法が行えない高齢者
に対する代替療法として取り上げられていることも多い。この項では、高齢者の放射線療法に関す
る疑問を、CQ1 年齢制限、CQ2 標準的照射の条件、CQ3 急性有害事象、CQ4 治療効果、CQ5 晩期
有害事象の5つにまとめて記載した。

Q1

放射線療法は何歳まで可能か?

A1

放射線療法に年齢による制限はない。

【 解説 】
放射線療法はその目的に応じて、根治照射、姑息・対症照射に大別される。
治療するがん腫により多少の差異はあるが根治照射では照射野は広く、総線量も多く、治療期間も
長くなる傾向があり、患者の負担は大きくなる。根治照射で標準治療とされるような治療に関して
は、根本となる臨床試験で年齢の制限がかかっており高齢者で安全に実施できるかは議論の残ると
ころであるが、後方視的研究では安全に実施できるとの報告も多数見られる

1)2)3)4)。これらの報

告は古い照射技術を用いた時代のもので、最近の照射技術では治療したい病巣に線量を集中させ、
副作用の原因となる周囲の正常組織の照射線量を下げることが可能になっており、より安全に治療
が可能と考えられる。
高齢者に好発する皮膚の基底細胞癌や有棘細胞癌に関しては、電子線照射や接線照射の組み合わ
せにより、正常臓器への照射を少なくし、有害事象も皮膚以外ではほとんど出すこともなく治療を
完遂することができ、治療の第一選択とされる事も多い

5)。治療期間が長い事が問題となるが、短

期照射でも十分な治療効果が期待できるとの報告もあり 6)、超高齢者でも適応となる。
姑息・対症照射では患者の苦痛を緩和する事を目的としているため、可能な限り小さな照射野で、
治療期間も短期間で行う事が多く、患者の負担は少ない。あらゆるがん腫に対して行う機会があり、
治療する部位も多岐にわたるが、いずれも患者の状態に合わせた照射範囲や治療スケジュールを組
んで治療を行うものであり、高齢という事で治療の適応から外れる事は少ない。
治療する機会が多いのは、骨転移と脳転移、腫瘍からの出血に対する止血目的の照射であるが、骨
転移による疼痛の緩和や、腫瘍出血からの止血を目的とした照射では病巣部に線量を集中させるこ
とにより短期間での治療も可能で患者にかかる負担は少ない。特に骨転移に対しては 1 回での治療
でも効果が期待でき 7)、高齢者に対する治療機会は増えている。
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