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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (216 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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3.

高齢者がん医療におけるポリファーマシー

Q1

高齢がん患者のポリファーマシーの定義と実態はどうか?

A1

ポリファーマシーとは、1 日 5-6 剤の常用的服薬があることが目安である。高齢がん患者
においては、がん以外に複数の併発疾患を抱えることが多く、ポリファーマシーの頻度
は高いと考えられる。ポリファーマシーの弊害は、多剤服薬による副作用や相互作用の
増加、アドヒアランスの低下がある。

【 解説 】
ポリファーマシーとは、単に服薬薬剤が多いことではなく、多剤服薬に伴い、薬剤による副作用
や相互作用の増加、本来服薬すべき薬剤のアドヒアランスの低下など包括的な問題を示す。何剤か
らポリファーマシーという定義に関しては、本邦の外来患者 165 名における調査では、5 剤以上の
服薬から転倒リスクが増える 1)、高齢入院患者 2,412 名における調査では、6 剤以上から有害事象が
有意に増えることから、5-6 剤以上と考えることが多い 2)。
ポリファーマシーの頻度については、本邦の同一保険薬局で調剤された薬剤数に関する調査があ
る。そこでは、65-75 歳の 28%および 75 歳以上の 41.1%が 5 剤以上の服薬を行っているポリファ
ーマシー状態の可能性がある 3)。 また、海外における高齢がん患者におけるポリファーマシーのレ
ビューを表 1 に示した

4)。調査した国、対象患者の状況(外来か入院、化学療法や緩和ケア施行患

者)などにより異なるが、高齢がん患者のポリファーマシーは、本邦以外においても頻度が高く、
問題となっている。
ポリファーマシーの弊害は、次の 2 つの報告からも示唆される。まず、平均 71.8 歳の外来通院が
ん患者 294 名における調査では、患者は 3 つの併発疾患を有して、中央値 6 剤(3-20 剤)を服用し
ていた。これらポリファーマシー状態にある高齢がん患者での問題点は、薬物相互作用の可能性
(36.4%)
、薬剤に関連する副作用(31.7%)と服薬ノンアドヒアランス(8.9%)であった。薬剤関
連副作用の発現に有意に関連する因子として 5 剤以上の服薬(オッズ比 4.1)および 3 疾患以上の併
発疾患(オッズ比 3.4)であった 5)。また、WHO ラダーにおける強オピオイドを使用している平均
62.3 歳のがん患者 2,282 名における調査では、平均服用薬剤数は、7.8 剤(1-20 剤)であり、この
うち 25%が 10 剤以上であった。
これらポリファーマシーを有する緩和ケア施行患者での問題点は、
45%の患者に不必要な薬剤、7%に互いに薬理効果が拮抗する薬剤、10%以上で肝代謝酵素の誘導
剤や拮抗剤が使用されていた 6)。
臨床的なポリファーマシーは、服薬数が多いのみではなく、以下を総合的に判断する必要がある。

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