よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (115 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

Q4

高齢者のホルモン感受性前立腺がんの骨転移治療で留意すべきことは何か?

A4

骨転移を有するホルモン感受性前立腺がんに対しては内分泌療法が有効である。
また、この状況での骨修飾薬の投与の全生存期間延長効果への意義は明らかでないが、
骨折のリスクがある場合は投与を検討すべきである。

【 解説 】
1. 転移を有するホルモン感受性前立腺がんにはホルモン治療が有効
ホルモン感受性前立腺がんに対しては、病期を問わず、治療初期には内分泌療法により骨病変も
含め病勢はコントロールされる

1)。つまり、骨転移を有する前立腺がん患者においてホルモン療法

が奏効している場合には骨転移巣の痛みの症状も緩和されることが多い。
2. 骨転移による痛みのコントロール
痛みを伴う骨転移の場合は、QOL を大きく損なうことから、鎮痛薬、放射線、骨親和性放射性核
種、ビスホスホネート製剤やデノスマブなどの骨修飾薬を用いた集学的治療が必要となる 2)。また、
切迫性の脊髄麻痺に対しては除圧手術および緊急照射などが考慮され、麻痺が固定される前に迅速
な対応が必要となる。
日本緩和医療学会の『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014 年版』には 3 段階のアプ
ローチが示され、第 1 段階として非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs;
NSAIDs)もしくはアセトアミノフェン、第 2 段階として弱オピオイドと非オピオイドの併用や低
用量オキシコドン、第 3 段階として強オピオイドを副作用対策を講じながら漸増するがん性疼痛の
管理が示されている 3)。また、限局性の有痛性骨転移に対しては、外照射が有用であり、8 Gy の単
回照射と 30 Gy/10 Fr の分割照射の有用性の比較がなされてきたが、最近のシステマティックレヴ
ューでは単回照射が推奨されている 4)。
3.

初回内分泌治療に反応している骨転移を有するホルモン感受性前立腺がんに対する、骨修飾薬

の全生存期間延長効果への投与意義は明らかになっていない。
骨転移を有するホルモン感受性前立腺がん患者に対してはゾレドロン酸やデノスマブの骨修飾薬
が生存期間の延長に有効であるかという点は現時点でも議論が多い。内分泌治療中で骨転移のある
前立腺がん患者にゾレドロン酸またはプラセボを投与したランダム化比較試験の結果では、無骨関
連事象(skeletal related event: SRE)、生存期間、無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)、
全生存期間(overall survival: OS)のいずれにおいても両群に差は認めなかった 5)。従って、2016 年
版前立腺がん診療ガイドラインでは、ホルモン感受性前立腺がんに対する骨修飾薬の投与は推奨グ
レード C2 と扱われている。
一方で、骨転移の有無に関わらず骨関連事象の中でも骨折は著しく QOL を損なうため、骨折の危
険性が高い場合には、骨転移を有するホルモン感受性前立腺がん患者に対しても骨修飾薬投与につ
いて検討の余地がある。EAU ガイドライン 2016 ではホルモン感受性前立腺がん患者に対し、“骨折
のリスクがないかぎり”内分泌療法による骨有害事象を予防するために骨修飾薬をルーチンに使用
107