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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (19 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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支持・緩和医療による有害事象を避け、死期が迫った患者においては過剰治療を避ける。
我々の最終の目的は、老いも若きもすべてのがん患者が、治癒が可能な段階にあっては QOL の



良好な状態で治癒が得られ、一方、治癒困難な段階であっても、種々の医療(②~④)介入を
受けながら、支持・緩和医療(⑤)を駆使し、さしたる苦痛なく寿命を全う(がん死)するこ
とである。
参考)
1)天寿がんの思想
癌研究会研究所の病理医で名誉所長である北川知行らは、
「さしたる苦痛もなしに、あたかも天寿
を全うしたように人を死に導く超高齢者のがん」 天寿がんの思想 1)を 20 年前に紹介している。が
ん患者を取り巻く生活・医療環境の整備、併存症やがんに対する治療の進歩により、超高齢者の年
齢の下限はその当時より伸びているが、我々の目指すがん医療を考える際に参考になるので、記載
する。定義としてはさしたる苦痛なしに死に到らしめる超高齢者のがん(男性≧85 歳、女性≧90
歳)で、その思想は以下のようである。
・人は天寿を授かっている。すなわち、人は必ず死ぬ。
・安らかに天寿を全うすることは、祝福されるべきことである(死因は問わない)。
・人細胞には遺伝子変異が毎日起こっている。年を重ねた分、遺伝子変異に伴うがん細胞
ができる可能性が高い。つまり、超高齢者のがんは、長生きの税金のようなものである。
・超高齢者のがんは人の一生の自然な経緯の1パターンである。
・天寿がんならがん死も悪くない。
・天寿がんと判れば、自然に徹する。攻撃的な治療も無意味な延命治療も行わない。
2)老衰死について
老衰死の基準を、剖検により臓器委縮以外に何ら病変ない高齢者の死とすると、福岡の久山研究
では 1.2%で、年齢とともに上昇する傾向がある。死亡診断書に基づく厚生労働省の 2015 年の統計
では、
「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死」の割合は 10 万人あたり男性
で 10.1 人、女性で 13.4 人である。その大半は、臨床的に死因が明確でなかった高齢者と考えられ
る 2)。
最近、老衰死についての調査がされ、老衰死が病死と比較して介護費が増えることなく、医療費
が低く抑えられることが報告されている 3)。健康長寿で老衰死が増えることの重要性が示唆される。

文献
1)

Kitagawa T et al. The concept of Tenju-gann, or "natural-end cancer". Cancer. 1998;
83:1061-1065

2)

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/other/15sibou/dl/12.pdf

3)

日本経済新聞. 第 47354 号. 12 月 25 日. 2017 年
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