参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (109 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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高齢者の骨転移修飾薬(Bone modifying agent;BMA)投与で留意すべきことは何か?
A3
高齢者の BMA 治療で注意すべき有害事象は、顎骨壊死と腎機能障害、低カルシウム血症で
ある。
【 解説 】
がん患者の骨転移に使用される骨転移修飾薬(Bone modifying agent;BMA)としては、ビスホ
スホネート製剤であるゾレドロン酸および抗ヒト RANKL モノクローナル抗体であるデノスマブの
2 種の注射剤が使用されている。これらの薬剤において注意すべき有害事象は、顎骨壊死
(Osteonecrosis of the Jaw:ONJ)および低カルシウム(Ca)血症、腎機能障害、骨痛と投与初期
の急性期反応(インフルエンザ様症状)などが挙げられる。
1. 顎骨壊死
(1)ONJ の原因とリスク因子は?
ONJ は、BMA 使用に伴い発生する重篤な有害事象である。顎骨には、上皮を貫通して歯が生え
ており、これを被覆する口腔粘膜は薄く、化学療法や歯周病および齲歯に対する侵襲的歯科治療で
破綻しやすい。そして、口腔内に豊富に存在する常在菌が、顎骨周囲に侵入し、ONJ の基本的病態
である顎骨感染を生じる。がん患者において、BMA 投与時の ONJ 誘発リスクは、齲歯や歯肉炎、
歯牙感染・膿瘍があり、システマティックレビューにおいてそれらの頻度は、28.1%、20.3%および
5.8%と報告されている 1)。
(2)高齢がん患者は ONJ の合併が多いか?
高齢者のうち、未処置の齲歯を有する割合は、約 30%程度とされる 2)。また、歯周病については、
年齢と共に罹患率が高まり、60 歳以上では約 50%前後に達する 2)。従って、高齢がん患者に対して
BMA を使用する場合、ONJ のリスク因子を有している可能性が高く、BMA 投与 2 週前までに歯科
治療や口腔衛生状態の改善を完遂しておくことが重要である。
(3)高齢者の適切な口腔衛生管理とは?
適切な口腔衛生管理をすることは、BMA 療法時の ONJ リスクを低下させることが報告されて
おり
3)4)、すべての患者で
BMA 投与開始前の歯科検診を受け、以下に示すリスク因子の低減、排
除である予防的歯科処置を行うことが推奨される 5)。
(BMA による ONJ リスク因子と予防的歯科処置)
・侵襲的歯科治療(抜歯、インプラント埋入など)が必要な疾患の治療
・義歯、咬合の適正化
・歯周病や歯槽膿漏、歯周病の治療
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