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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (120 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q3

CIPN を呈している高齢者に対し、特に配慮されるべきことはあるか?

A3

バランストレーニングが転倒予防に、また運動療法が CIPN の自覚症状の改善に役立つ。

【 解説 】
転倒リスクの軽減にバランストレーニングが有用との報告が複数ある。
画像モニターとセンサーを用いたゲーム的バランストレーニングシステムは糖尿病性神経障害や
フレイルな高齢者で運動機能改善の効果が報告されている。Schwenk や Cammisuli らの報告では
このシステムによるトレーニングにより CIPN による運動障害でも運動機能改善および転倒リスク
軽減を確認した 1)2)。システム一式が必要なため、実地医療でこのまま行うのは困難であるが、バラ
ンスを必要とする運動(安全なもの)やバランスボードを用いた家庭用ゲ−ム機は有用かもしれない
3)4)。

日常での転倒の注意では、階段や段差、滑り易い敷物、脱げ易い履物に気をつける、などといった
点であろう。
CIPN の自覚症状の改善に有酸素運動(自転車エルゴメーターなど)や抵抗運動(筋肉への負荷)
が有用であるとする報告が相次いでいる。Kleckner らはタキサン、白金、ビンカアルカロイドの投
与を受けている患者を 6 週間、自宅での運動プログラム(歩行や抵抗バンドによる運動)を行う群
と行わない群に割り付けした所、運動群では対照群に比較して CIPN による症状の軽減傾向を報告
した(温痛覚障害 p=0.045、しびれ p=0.061)5)。この運動による効果は非高齢者と比較し高齢者で
高い傾向があった(p=0.086)。
この他にも運動が CIPN の軽減に効果があるとする報告が幾つかあり、Zimmer らも年齢中央値
約 70 歳の高齢大腸がん患者において 8 週間の運動プログラムで CIPN 症状のいくつかの進行を抑
制できることを報告した(質問紙による自覚症状の評価 p=0.015〜0.984 および理学的所見 p=0.011
〜0.805)6)。運動は抗炎症や中枢神経への効果により CIPN を改善すると考えられている 7)8)。
CIPN 以外でも、がん患者における運動療法の有用性を示した報告は多く、運動は倦怠感、抑うつ
傾向、疼痛、睡眠障害などへの有効性が報告されている 9)。このマルチな効果を示す「運動」はがん
患者に対し、現状よりももっと積極的に勧められるべきである。医療現場において挨拶がわりに交
わされる「おだいじに」という言葉を「安静に」と受け取らないよう、医療スタッフは頻繁に「安静
が良いわけではなく、積極的に体を動かすように」声がけをした方が良い。
運動量の目安として一般に成人患者(18〜64 歳)に対して、中等度の身体運動(歩行など)を週
150 分、高強度の有酸素運動(自転車エルゴメーターなど)を週 75 分、さらに中〜高強度の抵抗運
動(抵抗バンドなどを用いる)を週2回以上行うことが推奨されている 9)。65 歳以上の高齢者にお
いても上記と同等の運動が推奨されているが、多くの高齢患者にとってこれだけの運動は困難であ
り、個々の体力に応じて軽減してもよいと思われる。

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