参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (57 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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CINV
Q1
化学療法を受ける高齢がん患者に対する制吐療法ではどのようなことに配慮すべきか?
A1
“併存疾患への直接的な影響”と“併存疾患に対する常用薬との薬物相互作用”の双方
へ配慮する。
【 解説 】
高齢者は、心疾患、糖尿病、骨粗鬆症、脳卒中など様々な併存疾患を合併していることが多い。加
齢とともに併存疾患数が増え、前期高齢者の 60〜70%、後期高齢者の約 75%は何らかの併存疾患を
合併している 1)。併存疾患の治療に対する常用薬も多く、65 歳以上の高齢者の 78%が常用薬を服用
しており、そのうち 67%が 2 剤以上、39%が 5 剤以上服用しているという報告もある 2)。したがっ
て、化学療法を受ける高齢がん患者に対する制吐療法では、併存疾患への直接的な影響と、併存疾
患に対する常用薬との薬物相互作用の両方への配慮が必要である。制吐剤を高齢がん患者に使用す
る時の注意点を、制吐剤別にまとめる。
1. セロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬
第 1 世代の 5-HT3 受容体拮抗薬は、心電図で QTc 間隔を延長させる副作用があり、不整脈のリス
クを 20%増加させる 3)。投与開始から 1〜2 時間後に発現し、24 時間以内に元に戻る。臨床的には
問題ないことがほとんどであるが、稀に torsade to pointes のような潜在的に致死的な不整脈が発
症することがあるため、心不全、徐脈性不整脈、房室ブロック、低カリウム血症、低マグネシウム血
症、
QTc 間隔を延長させる薬剤の服用のリスクを持つ患者では心電図モニタリングが推奨される 4)。
心電図異常の発生は用量依存性であるため、また、5-HT3 受容体拮抗薬の増量や複数回投与は制吐
効果を改善しないので、5-HT3 受容体拮抗薬は推奨用量の単回投与が推奨される。なお、第 2 世代
の 5-HT3 受容体拮抗薬(パロノセトロン)では心電図異常は報告されていない。
5-HT3 受容体拮抗薬により便秘が約 10%に発症するが、高齢者では消化管機能低下による便秘の
リスクがあるので、緩下剤の投与を検討する 5)。
2. ニューロキニン 1(NK-1)受容体拮抗薬
アプレピタントには、軽度から中等度の CYP3A4 阻害・誘導作用と CYP2C9 の誘導作用がある。
したがって、薬物代謝に CYP3A4、CYP2C9 が関与する薬剤を服用している患者では、薬物相互作
用に注意する。アプレピタントとの併用により作用が増強する薬剤としてジルチアゼム、減弱する
薬剤としてワルファリン、フェニトイン、カルバマゼピン、パロキセチンがある。
アプレピタントはワルファリンの作用を減弱させ、PT-INR が 10〜20%低下するので、ワルファ
リン使用患者にアプレピタントを使用する場合には PT-INR のモニタリング、ワルファリンの用量
調整を行う 6)。フェニトイン、カルバマゼピンの作用が減弱するとてんかん発作が誘発されるので、
血中濃度のモニタリングを行う。
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