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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (74 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q3

高齢者に鎮痛薬全般を使用するときに注意すべき点はあるか?

A3

加齢に伴い痛覚鈍麻あるいは過敏を惹起するとともに心身の機能が低下しているので、
機能評価、既に罹患している疾患の有無を確認し、疼痛対策をとる。

【 解説 】
高齢者は加齢に伴い痛覚鈍麻あるいは過敏を惹起することが明らかとなっている。また、知覚神
経障害のみならず、加齢に伴い認知機能の低下や心理社会的の負荷を伴うことが少なくないことか
ら、痛みのアセスメントを慎重に行った上で、鎮痛薬の選択や用量設定には十分に注意する必要が
ある。さらには、高齢に伴う代謝機能変化 (過量投与の危険性) や既に罹患している疾患の有無 (多
剤併用、長期服用の危険性)、アドヒアランスの低下 (誤服薬や断薬の危険性) 等にも留意し、疼痛
コントロールを行う必要がある。
1. これまでにわかっていること
高齢者における疼痛閾値や耐性に関わる systematic review やメタ解析はいくつか散見されるが、
その内容については様々である。例えば、2017 年の Tumi らの報告 1)によると、高齢者の疼痛閾
値は若齢者と比較して、低い傾向、すなわち痛みを感じやすい状態にあることが示されている。ま
た、痛み刺激の種類により分類を行ったメタ解析の結果によると、高齢者において、圧刺激に対す
る疼痛閾値は低く、熱刺激に対しては老齢者と若齢者では疼痛閾値に差が認められないことが報告
されている。一方、同じく 2017 年の Lautenbacher らの systematic review2) では、疼痛閾値
や痛みに対する耐性のみならず、痛み刺激の種類 (熱刺激、圧刺激、電気刺激) や痛みが起こる場所
について分類して、統計解析を行っている。それらの解析により、加齢に伴い、疼痛閾値が高くなる
(痛覚鈍麻になる) のに対して、痛み耐性は減弱傾向 (我慢できなくなる) であるといった結果がま
とめられている。こうした様々なケースにおける結論のばらつきや、矛盾点を加味した上で、個々
の高齢者に対して、痛みのアセスメントは慎重に行う必要がある。また、高齢者は不安神経症など
の精神疾患や認知症や神経変性疾患を伴う場合もあり、痛みのアセスメントに及ばない場合がある。
そのため、鎮痛薬の選択も慎重に行う必要がある。
また、高齢者は加齢に伴い肝臓や腎臓の機能低下を有することが想定されるため、代謝や排泄が
低下している可能性を考えるべきである。さらには、高齢者は既に罹患している疾患を数多く持つ
場合が多いため、既に服用している治療薬との相互作用も注意する必要がある。高齢者に鎮痛薬を
使用する場合は、患者背景や患者データをよく読み取り、使用を勧めていくことが重要である。
2. どういう研究が必要か
こうした報告などから示唆される内容としては、高齢者において、疼痛閾値が変化することは確
かだが、痛覚鈍麻となるかあるいは過敏となるのか、一貫性を導き出すのは現状困難である。その
ため、基礎研究の推進も必要であり、加齢に伴う知覚神経異常に対するエビデンスを集積させるこ
とが必要である。例えば、高齢における侵害刺激に反応する Aδ/c 線維と機械的刺激に反応する Aβ
線維のそれぞれにおける器質的あるいは機能的な変化を検討したりすることは重要である。また、
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