参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (145 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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高齢者における放射線療法の急性期有害事象は、非高齢者と異なるか?急性期有害事象
の発生頻度や重症度は、非高齢者に比べて増加するか?
A3
放射線療法における急性期有害事象は高齢者と非高齢者とで本質的な違いはない。
発生頻度や重症度も大きな違いはないという報告が多い。しかし、同じ重症度の有害事
象でも、高齢者では入院期間の長期化や入院率の上昇につながるという報告もあるので
注意を要する。
【 解説 】
放射線療法の急性有害事象は骨髄や皮膚、腸管粘膜などの細胞再生系の組織に認められるもので
あるため、その回復には組織再生能が大きく影響する。加齢によって、テロメラーゼの活性低下・
テロメアの短縮による細胞の不安定化や幹細胞の増殖能力や遊走能力の低下が起こるため、高齢者
においては急性期有害事象からの回復が問題となる可能性が大きい 1)。
臨床試験で高齢者をターゲットにしたものは殆どないが、Ausili-Cefaro らはイタリアの 70 歳以
上の高齢者の放射線療法に関する前向きの調査研究で、高齢者であっても、全身状態が良好であれ
ば、根治的放射線治療は行えると報告している 2)。Chargari らは 90 歳以上の放射線治療患者に関
する後顧的研究で、全身状態が良好な場合は、根治的放射線治療も可能であるが、有害事象と高齢
者の脆弱性に対しては配慮が必要と述べている 3)。その他、複数のレビューでも同様の傾向である。
年齢以外では適格条件を満たすような良好な身体状態の高齢者では基本的に根治的放射線治療は可
能であり、急性期有害事象の内容や発生率については、高齢者と若年者で大きな違いはないが、高
齢者においては、急性期有害事象による入院期間の長期化や有害事象の回復の遅れが報告されてい
る 4)。
嘔気・嘔吐のように、放射線療法の急性期有害事象の中で、高齢者における発生率が若年者より
も低いと言われてものもある。その理由は明確ではないが、発生率は低くとも、高齢者では嘔気・
嘔吐による脱水が顕在化しにくく、結果的に電解質バランスが崩れて全身状態が悪化する可能性が
ある。そのため、予防的な制吐薬の使用も含めた積極的対応が必要である 4)。
放射線療法の技術的進歩によって、照射範囲を腫瘍に可及的に限局し、治療期間を短縮すること
も可能になった。そのため、高齢者に対する放射線療法の適応も拡大し、その傾向は今後も続くで
あろう。急性期有害事象については、高齢者において脆弱性や細胞再生能力の低下があるため、有
害事象が身体に与える影響への適切な対応が必要になる。そのためには、実年齢ではなく身体機能
を評価して対応することが重要である 5)。
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