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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (171 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q4

認知症のあるがん患者の治療を進める上で、がん治療医が注意すべき点は何か?

A4-1

認知症は生命予後や療養生活の質に重大な影響を与える。

A4-2

認知症の有症率は高い。

A4-3

治療を開始・変更するときに認知機能の評価を実施することを推奨する。

【 解説 】
認知機能障害とがん治療との関係は、今までの臨床研究では認知機能障害をもつ症例が除外され
ていたことから限られた情報しかない。
認知症自体、進行性の疾患であり、生命予後を規定する疾患である。アルツハイマー型認知症で
は、診断後の余命は約 4-6 年である。わが国における認知症の有症率は 65 歳以上の 15%と推測さ
れている。
一般診療では、認知症はせん妄の発症や治療後の認知機能低下と関連するほか、転倒や合併症の
増加とも関連し、機能低下や施設入所の増加、在院日数の延長、再入院の増加、死亡率の上昇と関連
する 1)。
一般人口を対象とした検討では、認知症をもつがん患者では、がん治療を受ける割合が低く、生
命予後が悪かった 2)。
認知機能障害は、治療における意思決定能力の低下や、治療アドヒアランスの低下などセルフケ
アの能力の低下と関連する。また、認知機能の低下自体、がん治療に関連した有害事象(血液毒性、
非血液毒性)の発生頻度の上昇や重篤化とも関連する。簡易認知機能検査 MMSE の一部は、がん治
療の有害事象を予測する CRASH スコアにも組み込まれている。
認知機能を評価することは、上記のリスクを評価する上でも有用である

3)。簡易認知機能検査に

は、項目数が比較的多く信頼性の高い Mini Mental State Examination (MMSE)や Montreal
Orientation Cognition Assessment (MoCA)の使用が推奨される 4)。長谷川式認知症スケールは簡便
なツールであり、日常臨床では頻用されているが、標準化はされていない。
MMSE は日本語版の標準化作業がなされ、健常者および軽度認知機能障害 対 軽度アルツハイ
マー型認知症の最適カットオフ値は 24/25 で、感度 79.1%、特異度 82.2%であった。
(2018 脳神経
科学 vol20 No2)
認知機能障害が疑われる場合には、身体機能評価、社会的問題もあわせて評価をし、多職種の視
点から網羅的に把握をする。評価に悩む場合には、精神科医や老年専門医、神経内科医、緩和ケアチ
ームなどの専門的コンサルテーションの利用を考える。
認知機能障害が疑われる場合には、一般診療において以下の点に注意をする。
・意思決定能力を評価し、低下をしている場合は認知機能障害に応じた説明をする
・本人の意向を確認したうえで、家族を含めて治療方針並びに状況を共有する
(認知症の診断と、意思決定能力の有無の判断は別の問題である)
・治療に関連した有害事象を予測し、可能な予防策を行う
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