参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (211 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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受けないことに納得していただくにはどうすれば良いか。
メリットとデメリットを天秤にかけて判断することは容易ではありません。最終的に命の重さとい
う話になると何者も比べられないからです。米国では壮年期の高い検診受診率が確保されています
が、その方々が 80 歳を超えても大腸がん検診受診率が 50%を超えているという状況になり、どう
やって情報を伝えるかの研究が進んでいますが、理解を得るのは容易ではありません。「検診は放置
すると数年後に命を奪う病気を早期発見・早期治療するものなので、その数年後まで余命が持たな
い方は受けない方がよい」という説明の仕方は、論理的ではありますが、高齢者の方には感情的に受
け入れがたく、反感を招きます。高齢の方は健康問題が一番関心が高いので、見捨てられ感を招き
やすいのです。
高齢者に受け入れやすい説明の仕方として「あなたはがんではなく、他の問題に対応しなければいけ
ません」というものです。60 歳代の死因の半数はがんですが、80 歳代になるとがん死因は 3 割を下
回り、肺炎・脳卒中・心疾患・認知症が主体になります。ほとんどの方は寝たきりで介護を受けるこ
とに対する恐怖を感じているので、60 歳代はがん予防・がん検診から 80 歳代は寝たきり予防・サ
ルコペニア予防にシフトしていく、という流れで見捨てられ感を回避する形が望ましいと考えてい
ます。
Q がん発見時に、治療が必要か必要でないか、わかるものなのですか?
それがわからないから、過剰治療として手術などを行ってしまう、ということでしょうか。
であれば、
「治療が必要ないがん」であることが、今後の医療の進歩でわかるようになると、
よりよいと感じました。
過剰診断についてわかりやすい説明を行っているのは米国の HG.Welch 先生で、日本語訳された本
も出版されていますのでご興味のある方はご一読ください。多くのがんでは治療が必要か否か、過
剰診断か否かはわからないため、手術に流れやすい(臨床医にとって目の前の患者さんを無治療で
悪化した場合の責任を感じるため)のです。現在、ゲノムで悪性度の事前予知をするような研究が
行われ、一部成果が上がりつつあります。たとえばリキッドバイオプシーと呼ばれる血液検査で、
治療が必要かどうかが判明するのであれば、高齢者にとっても比較的安全に検診を受診することが
できるようになると考えられますが、まだ開発途上です。
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