参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (72 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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高齢者の痛みをアセスメントする時に留意するコツはあるか?
A2
基本的な機能評価、とくに ADL の状態を観察する。認知障害がある場合は、痛みの自己報
告だけでなく表情や態度などから客観的にとらえる。
【 解説 】
高齢者の複雑な痛みと痛みによる影響について正確に判断するために、より多くの情報を得る。
高齢者自身が痛みを語りやすいように環境を整え、日常生活の影響について医療者と十分に話しあ
い、同時に十分な観察による評価を行うことが、隠れた原因を見出すことになる。
1. 原則
高齢者の多くは痛みを体験し、QOL に影響がでる。日本緩和医療学会のがん疼痛の薬物療法に関
「高齢者はオピオイドの薬物動態が変化しているため少量からの開始が基
するガイドライン 1)には,
本である」と明記されてある。高齢者の生理機能の変化により薬物療法による身体的影響を受けや
すいため過少評価にならないよう、個々の生理機能の変化を理解し、基本的な機能評価を行う必要
がある。医療者側として、患者が情報を知らせない理由を見抜くことは難しいが、ADL の状態を注
意深く観察することができる。アセスメントを行う過程で観察による手がかりが得られると、痛み
の隠れた原因を見出すことがあり、痛みの原因に対する治療がされれば、高齢者の QOL は改善する
2)。高齢者の痛みをアセスメントするには、より多角的な情報を得ることが必要であり、高齢者自身
が自分の言葉で語れるように信頼感を築くことが重要となる。
2. 高齢者のがん疼痛アセスメント
加齢にともないがんや筋骨格系の罹患率は高くなり、痛みによる心理的・社会的な障害により高
齢者の QOL に影響を及ぼす。
2002 年の米国老年医学会の慢性痛のガイドライン 3)では、高齢者の痛みの評価で最も信頼できる
のは自己報告法であり、第 5 のバイタルサインとして、
「0 から 10 段階で今どれだけ痛みがあるの
か」と質問することだと述べている。しかしながら、認知障害の有無に関わらず口頭での評価に苦
慮する人は、口頭での質問に加えて、痛みに関連した行動と機能状態の変化を観察する必要がある。
認知障害高齢者の一般的な痛みに伴う行動は、
「顔の表情」
「言葉遣い」
「発声」
「身体の動き」
「精神
状態の変化」「その他の行動」の 6 つのカテゴリーで表される。
日本の高齢者のがん疼痛治療上の問題についての調査では、痛みの評価には複雑な社会的・家庭
的背景が関連し、立場により疼痛に依存性がでること、がん以前からの慢性痛の評価が重要である
ことが示唆されている
4)。村田らによると、腰部下肢の慢性痛を有する高齢者においては、痛みの
主観的強度、自己効力感が歩行速度に関連していることが報告されており
5)、痛みに対する心理状
態の悪化は運動機能低下と関連していることが示唆されている。患者に適したツールを用いて記録
することは、痛みの継続的なアセスメント、評価に役立ち、痛みが緩和されているのかを見極める
ことができる。
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