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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (17 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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9.支持・緩和医療の実施にあたり高齢者と非高齢者の間に考え方に差があるか?
支持・緩和医療領域においては、がん治療よりも難しい判断が要求される。たとえば、不応性の
貧血症(骨髄異形成症候群や再生不良性貧血)において、輸血をすれば貧血症状や出血傾向が緩和
され、症状の改善と延命につながる可能性がある。ただ、Hb 値を 7g/dL 以上にするために定期的な
赤血球輸血ならびに鉄過剰症を予防する鉄キレート薬は高価であるとともに、輸血のための通院と
外来治療室における数時間の輸血は高齢患者にとって相当な負担となる。また、すでに死が間近に
せまり、積極的な医療の介入によっても可逆性が期待できない終末期の状態において、例えば、発
熱時に感染症を疑い、種々の原因検索や抗菌薬投与をするかどうか、水分・栄養摂取が困難になっ
たときの対応は、常に医療者ならびにケアギバーを悩ませる事象である。これには、他の学会のス
テートメントが参考になる。
成人肺炎診療ガイドライン(日本呼吸器学会、2017 年)1)では、肺炎を繰り返す衰弱した高齢者
や肺炎を併発した終末期のがん患者などにおいて、抗菌薬の使用といった積極的な治療を控え、苦
しみを和らげるケアへ移行することも選択肢とする。患者が治療でわずかに延命が可能であったと
しても、苦痛で充実した時間を過ごせないと複数の医師が判断した場合、人工呼吸器や抗菌薬によ
る治療以外に、苦痛をとる治療も選択肢として患者に示すことができる。意思確認ができない場合
は、家族が推定する意思を尊重し、医療チームで方針を決める。同様に、日本老年医学会は慎重な
議論を重ね、2012 年に「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン-人工的水分・栄養
補給の導入を中心として」を世に問うている 2)。
現時点で(おそらく将来も)
、上記したように高齢者と非高齢者の間で「命の価値」に差をつける
ことはできない。ただ、高齢者は生理的にすべての臓器において機能が低下している。したがって、
抗がん治療、支持・緩和治療いずれにおいても、やや保存的な考え方で対応することでも、治療成
績を包括的にみたとき、標準治療の成績に劣ることはない可能性がある。検証していくべき課題で
ある。
文献
1) https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=94
2) https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/proposal/pdf/jgs_ahn_gl_2012.pdf
10.これからのがん医療のあり方~がん治療と支持・緩和医療の統合
加齢に伴う生理的な心身機能の低下、複数の併存症、多薬、そして何よりも個人差が大きい高齢
がん患者をケアするにあたっては、がんと診断された時からのがんをターゲットとした診療(がん
治療)と患者をサポートする支持・緩和を中心とした診療(支持・緩和医療)が同時進行で実施さ
れなければ、安全で目的とする効果が得られない。すなわちがん治療と支持・緩和療法の統合が必
要である(integration of oncology and supportive/palliative care, IOP、図6)。ただ、がん治療医は
十分ではないが存在するが、支持・緩和医療を専門とする医師は限られており、その育成は喫緊の
課題である。現実的には、①がん治療医と基本的な緩和ケア研修 1)を受けた一般医が 2 人主治医と
して併診していく、あるいは、②有効ながん治療が少なくなってきた段階で、がん治療科と緩和医
療科が一緒に診療を進め、がん治療に限界が見えたときに、緩和医療科にスムースに移行する形で
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