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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (221 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q3
A3

高齢がん患者へのポリファーマシーの改善策は何か?
ポリファーマシー改善の目標は、ガイドラインの基準に該当する薬剤だからという理由
のみで一律に薬剤を減らすことではない。また、ポリファーマシーを生まないためにも、
初めて処方する医療者が、処方の根拠や再評価時期と中止の目安を診療録に残すことが
重要である。

【 解説 】
高齢がん患者にポリファーマシーが形成される必然性は、以下の例が考えられる。まず、高齢が
ん患者は、がんに罹患する前に既に高血圧、糖尿病、高脂血症、COPD、骨粗鬆症、慢性心不全、
前立腺肥大など慢性疾患に罹患していることが多い。各疾患には、治療ガイドラインがあり、がん
患者が通院するクリニックの専門医は、最適な薬物療法を適用するため、必然的に疾患毎に処方が
増える。さらに、疾病毎に追加される薬剤が多くなるほど、薬剤による有害事象の可能性も高まり、
これを薬剤で対処してゆく「処方カスケード」がポリファーマシーを加速させる。
ポリファーマシーの改善は、STOPP/START criteria や Beers criteria、高齢者の安全な薬物療法
ガイドラインの基準に該当する薬剤だからという理由のみで一律に薬剤を減らすことが目的ではな
い。減薬は、現在の処方の評価(医学的根拠、処方された経緯など)が重要である。また、中止後
の疾病や有害事象の評価も重要である。減薬の進め方に関するフローチャートを図 1 に示した。ま
た、単に薬剤数を減らすのみではなく、肝機能や腎機能の考慮、血中濃度測定が有用な薬剤の場合、
これを測定して投与量を減らしたり、投与間隔を延長する、新たに処方する場合少量から開始する
ことなどが高齢者に望まれる広義の減薬である。また、初めて処方時には、漫然と服薬が継続され
ないよう、処方の根拠や再評価時期と中止の目安を診療録に残すことが重要である。このような処
方意図を新たに処方時に記録に残すことは、処方した医師のみならず、後に患者を診る他の医療者
が、
「効いているかもしれない」

「減らすと症状が再燃するのでは」という根拠のない考えをなくし、
減薬のきっかけとなるため重要である。
ポリファーマシーを減らすための介入には、医療者への教育が重要であると思われる。レビュー
では、医療者へのポリファーマシーへの教育的介入が、処方薬剤を減らせる可能性が示されている 1)。
また、薬剤師の介入が START/STOPP criteria や Beers criteria Beers 評価による使用薬剤の適性
度を改善させる報告されている

2)。しかし、多くの研究の目的や背景の異質性から、薬剤数は減ら

せても副作用の頻度やそれによる入院頻度に関する有益性に関する結果は、一貫していない 3)。
ポリファーマシーは、高齢患者において必然であり、特にがん患者は、改善が期待される患者群
であろう。本邦の医療体制のなかでは、多くの医療機関を受診する通院患者の場合、保険薬局によ
る薬歴の一元管理、薬剤師による減薬提案などが効果的なポリファーマシー解決策として期待され
ている。

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