参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (219 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html |
出典情報 | がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》 |
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高齢がん患者への多剤投与が適切ではない薬剤とは何か?
A2
高齢者への使用に慎重な注意が必要な薬剤としては、抗精神病薬、睡眠薬(ベンゾジア
ゼピンおよび非ベンゾジアゼピン)、抗うつ薬(三環系および SSRI)、抗パーキンソン病
薬、抗血栓薬、ジギタリス、利尿薬(ループおよびアルドステロン拮抗薬)
、α または β
遮断薬、抗ヒスタミン薬(H1 および H2 受容体拮抗薬)、制吐薬(スルピリドやメトクロ
プラミド等)、緩下薬(腎機能低下患者の酸化マグネシウム)、糖尿病薬(スルホニル尿
素系薬およびインスリン)
、過活動膀胱治療薬、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、
アンギオテンシン拮抗薬(ACE 阻害薬および ARB)、スタチンなどである。
【 解説 】
高齢者へのポリファーマシーが問題となる理由として、高齢者が若年者に比べ、生理機能が低下
することによる薬物動態学的および薬力学的な作用増強が生じることにある。その生理的原因と例
を表 2 に示した。実際に、高齢者が多く収容される介護施設において、投与が適切ではない薬剤
(Potentially inappropriate medication; PIM)による医療機関への緊急入院や治療関連死の原因薬
剤は、NSAIDsや抗精神病薬、ジゴキシンや血糖降下薬であるとされる 1)。これらを根拠に、がん
患者に問わず高齢者への PIM とされる薬剤は、欧州では STOPP/START criteria2)や米国では Beers
criteria3)で規定されている。日本では、日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」
4)において、
「特に慎重な投与を要する薬物」あるいは「開始を考慮すべき薬物」としてリストにさ
れている。このガイドラインにおける、高齢者とは、75 歳以上または、75 歳未満でもフレイル(身
体機能や認知機能が低下して虚弱となった状態)または要介護状態の高齢者を示す。使用に関する
推奨は、1 ヶ月以上の長期使用を前提としているので、解釈に注意が必要である。このうち、特に
がん患者において頻用され、高齢者においてこれら基準に該当する薬剤を表 3 に示した。
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