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参考資料14 高齢者がん医療Q&A総論(厚生労働科学研究「高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究」) (199 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28073.html
出典情報 がん対策推進協議会(第82回 9/20)《厚生労働省》
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Q2

高齢者がん診療における PRO の有用性は何か?

A2

医療者に伝えにくい主観的な症状を見える化し、安全で適切な診療につなぐことができ
る。

【 解説 】
PRO による情報収集は、伝えにくい主観的な患者の症状の変化を「見える化」して、適切な診
療にフィードバックすることが期待できる。また、診察室にて在宅期間中に経験した有害事象を正
確に想起したり要約することが負担になりやすい高齢者においても、ePRO による情報収集は大き
な補助となる。特に、70 歳以降は急速に認知症の有病率が増加することが知られており 1)、症状
を逐次記録することによって体験した有害事象を診察室で伝える際の短期記憶の低下をカバーする
ことが期待される。
老化に伴う臓器機能の低下のため、高齢者では有害事象の頻度が高まる可能性があり 2)、早期に
有害事象を検出し適切に対応することが求められる。海外での報告にもあるように、ePRO にアラ
ート機能を実装すれば、強い有害事象の報告をより早期に検知して対応することも可能となる 3)。
Basch らの報告によると、ePRO システムによって有害事象をマネジメントすることによって、患
者の QOL や ER 受診率にメリットがるばかりでなく、予後を延長する可能性も示唆している 4)。
このように、がん薬物療法における有害事象マネジメントが最適化されることによって、高齢者に
おいても有効な治療がより安全により長期に継続出来る可能性がある。
一方、ePRO は臨床研究においても有用であり、PRO によって評価されるエンドポイントを設
定することの多い支持療法の臨床研究を促進するプラットフォームとなることが期待される。
また、2018 年 4 月の診療報酬改訂においてオンライン診療料が認められたが、このオンライン
診療と ePRO を組み合わせることによっても、高齢者がん診療を大きく変化させる可能性がある。
システムの導入には未だ多くの障壁はあるが、患者は体調不良時に、在宅のまま医療者の対面診察
を受け、アドバイスを受けることができるだろう。

文献
1)

長寿科学振興財団. 平成 25 年度 厚生労働科学研究費補助金事業 認知症対策総合研究. 2013

2)

Kohn RR. Human aging and disease. J Chronic Dis. 1963;16:5-21

3)

Basch E et al. Symptom Monitoring With Patient-Reported Outcomes During Routine
Cancer Treatment: A Randomized Controlled Trial. J Clin Oncol. 2016;34:557-565

4)

Basch E et al. Overall Survival Results of a Trial Assessing Patient-Reported
Outcomes for Symptom Monitoring During Routine Cancer Treatment. JAMA.
2017;318:197-198

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